最新記事

ウクライナ難民

【ウクライナ・ポーランド国境現地ルポ】ドイツの難民受け入れ......市民の活躍と差別論

2022年3月9日(水)15時39分
モーゲンスタン陽子、モーゲンスタン開、ダーシャ・ティムチェンコ

ドイツ人の責任感は歴史だけからきているわけではない。ポリティコ誌は、英米、フランスなど様々な国がプーチンの暴挙を許す原因を作ったが、最も責任があるのはドイツだとし、ジョージア侵略からクリミア併合、ナワリヌイ氏の毒殺事件まで、ドイツがいかにロシアの罪に目を瞑り政財界で癒着してきたかを糾弾している。

ドイツ一般市民がこの事実をどのように感じているかはわからない。同誌はまた、先月22日の時点でドイツ人の半数がウクライナのNATO加盟に反対していること、さらに1月13日の時点で67%がロシアとドイツを結ぶパイプライン「ノルドストリーム2」のオペレーションに賛成していることも指摘している。一部のドイツ人が迅速な対応を見せたのは、歴史だけではなく現状からも罪悪感を感じていたからかもしれない。

ウクライナ難民に対する反応の速さを「人種差別だ」とする批判も

一方で、西側諸国のウクライナ難民に対する反応の速さを「人種差別だ」とする批判も出ている。「金髪碧眼」で「自分達のような」「洗練された」「ヨーロッパ人」だから、シリアやパレスチナ難民とは扱いが違うというのだ。

確かに今回の危機では、ふだんは反移民的なポーランドやハンガリーでさえ協力的だし、中にはスペイン極右政党フォックス党党首のサンティアゴ・アバスカルのように、スペインはムスリムではなくウクライナ移民を受け入れるべきだと言い切るものまでいる。だが、間近で見ている者として断言できるが、ドイツ人に限ってはウクライナ難民を断じてその容姿で受け入れているわけではない。そもそも、ドイツはどの国よりシリア難民を受け入れている(2020年の時点でトルコ、レバノン、ヨルダンに続いて世界4位の約62万人、欧州で1位だ)。

さらに、シリアがあったからこそ今回素早い対応ができたとも言える。シリア難民受け入れの際は、何かしたいがどうしていいかわからない一般市民もたくさんいた。たとえば、ボランティアひとつにしても、正式に登録するには犯罪歴がないことを証明する必要があり、その書類は警察で発行してもらわなければならないと広く信じられていた(実際には市役所で簡単に発行してもらえる)。あるいは、シリア難民が南のミュンヘン駅に続々と到着する様子をニュースで見慣れていたからこそ、ベルリン市民たちが今回素早く対応できたのではないか。

難民一家を預かり、ポーランド-ウクライナ国境でボランティア

実はわが家でも、ウクライナ難民一家を預かっている。先述のドイツ語教室クラスメートのつてだ。原発が襲撃される3日前に東部ザポリージャを脱出した。

ザポリージャからポーランドのプシェムィシルまで電車で12時間。車内は大変混み合っており、席を譲り合う姿も見られたものの、中には12時間立ちっぱなしの人もいたようだ。ポーランドからはさらにバスで10時間。3月2日の深夜0時にベルリンに到着し、翌日ここニュルンベルクに到着した。子供たちも含め、2日間ほとんど寝ていないという。

IMG-8afa69efb9073a8f6a1aabc6c5a27bb9-V.jpg[Photo:電車の中] Dasha Timchenko for Newsweek Japan


一方、筆者の息子は、ウクライナとポーランド国境のドロフスクでボランティア活動に励んでいる。雪のちらつく中、食料品や薬品、毛布などの支援物資の配布と医師の補助などを行なっている。支援物資はおもにポーランド国内からの寄付だが、欧州他国から陸路で郵送されてくることもある。ボランティアもほとんどがポーランド人だが、ドイツやフランス、カナダからも来ているようだ。

現時点では組織だった活動というよりは個々人の意思で寄り集まって行動しているらしい。Polish Humanitarian Action(PHA ポーランド人道活動)などの組織がボランティアたちに移動手段や宿泊施設を提供しているようだが、宿のあるルブリンまでは車で片道1時間半もかかるため、ボランティアの多くは国境付近でウクライナ人の営むホステルに自腹で滞在しているようだ(1泊1200円程度)。

20220308_192758.jpg

morgenstan20220309d.jpg

20220305_190031.jpg[photo:物資給付スタンド] Kai Morgenstern for Newsweek Japan

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン首相、米主導「平和評議会」初の首脳会合に

ワールド

ベネズエラ暫定大統領、米から招待と発言=報道

ワールド

トランプ米政権、帰化者の市民権剥奪へ取り組み拡大=

ワールド

ミネソタ州への移民対策職員増派が終了へ、トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 10
    台湾侵攻を控えるにもかかわらず軍幹部を粛清...世界…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中