快楽は「悪」ではない...性教育は「性的欲求を認める」ことで、より効果的になる
Putting the Sexy in Safe Sex
研究チームはまず、05~20年に世界各地で行われた性と生殖に関する健康教育プログラムについて、過去の数千件の実験的研究を分析した。その結果、「性の健康世界学会」が19年に提言した「快楽を伴う性的健康の教育」の基準に適合するプログラムはわずか33件だった。
これら33件のうち、プログラムの成果としてコンドームの使用を挙げている8件(ブラジルの公立学校の性教育、アトランタのコミュニティー単位のHIV予防のワークショップなど)を検証。その結果、セックスにおける快楽の役割について教えない介入策と比較して、コンドームの使用に関し、比較的もしくは確実に肯定的な効果がある──つまりセックスをする際に、コンドームを使う傾向が多く見られることが分かった。
今回のメタ分析は、快楽に基づく性教育は性に関する自律性を促すという専門家の長年の主張を裏付ける。ニューヨーク市立大学大学院センターのミシェル・ファインは1988年に、快楽を中心とする性教育は「権利への入り口」であり、自分の性的判断や性的体験をコントロールできるようになると述べている。
「自分の声と考えを持って選択し、コントロールし、イエスと言い、ノーと言い、誰とするかを自分で決められる形で、社会生活のこの領域に関わる方法を思い描く。欲望と向き合わなければ、恐怖や被害者意識しか残らず、非常に脆弱な立場に追いやられる」
安全対策についても話しやすくなる
自分の欲望について安心して話せると思えるようになれば、安全対策についても話しやすくなる。
「自分は何に興味があって、以前に起きたことが好きだったかどうか」を正確に伝えられるように教えることは「快楽とスキルに基づく」介入だと、セックスセラピストのロサラ・トリッシは言う。それを機に、パートナーと「より安全なセックスをするための方法」を話し合えるようになるだろう。
フィルポットたちが分析した介入プログラムは、参加者の年齢、国籍、社会的立場などが異なる。ファインはそのサンプルの多様性から、快楽は性教育にとって広く肯定的な要素であることがよりよく分かると言う。
フィルポットは今回の研究が、快楽に基づく性教育への資金援助につながってほしいと語る。「性の健康や性教育について、より現実的な話ができるだけでなく、より効果的で費用対効果の高い介入にしていくことができる」
そして、「快楽の波」が高まること、すなわち快楽に基づく介入への注目が高まることも期待する。「私たちは長い間、なぜそうしなければならないのかを主張してきたが、これからはエビデンスを踏まえて、次のステージにどのように導いていくかを考えなければならない」
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