最新記事

感染症

オミクロン後に起きること...本当にこれで「コロナ危機」は終わりなのか?

THE FOREVER VIRUS

2022年3月3日(木)17時11分
ネッド・ポッター、フレッド・グタール
新型コロナ検査

ニューヨークの街角で新型コロナ検査の順番を待つ市民 ANDREW KELLYーREUTERS

<新型コロナウイルスは弱毒化して共存できるという見方もあるが、新たな変異によって危機再来の可能性も。必要なのは長期戦への覚悟と準備>

世界中で猛威を振るうオミクロン株の波は、既にピークを打ったのかもしれない。米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のコンピューターモデルでは、アメリカで毎日報告される新規陽性者数は1月19日までに最大値の120万人に達し、その後減少に転じると予測されていた。実際、アメリカは南アフリカと同様のパターンをたどり、その後は急激に減少した。

オミクロンの大流行が新型コロナウイルスのパンデミックの終わりの始まりとなる可能性はある。ただし、必ずそうなるとは言い切れない。

楽観的シナリオは次のようなものだ。オミクロンが世界を席巻した後、十分な数の人々が自然免疫を獲得する。ワクチン接種済みの人々も考え合わせれば、その後の感染は恒常的に低いレベルに抑えられる。その日が到来すれば、世界は絶え間ない危機の連続から、もっと制御しやすい状態に移行し始める。このレベルの感染でも研究者や公衆衛生担当者は大忙しだが、残りの人々は普段どおりの日常に戻ることができる。

一方、こんな悲観的なシナリオが実現する可能性もある。まず、新型コロナウイルスの新たな予期せぬ変異株が生じ、私たちの希望を打ち砕くというおなじみの悪夢が再現される。オミクロンは沈静化するものの、別の厄介な変異株に取って代わられるだけで、さらに多くの患者と死者を出しながらパンデミックは拡大し続ける。

原因ウイルスは何世代も居座り続ける

近い将来にどちらのシナリオが現実になるかを断言するのは、まだ時期尚早だ。おそらく事後に振り返ってみて初めて分かるのだろう。ただし、1つだけほぼ確実なことがある。新型コロナの原因ウイルス(SARSCoV-2)はなくならないということだ。今後何世代にもわたり居座り続けるだろうと、大半の専門家は口をそろえる。

たとえパンデミックが収束しても、「ウィズコロナ」の未来がどんなものになるかは分からない。新型コロナウイルスは普通の風邪のような害の少ないものになるのか。それとも、インフルエンザのように私たちを悩ませ続け、毎年の予防接種と次の大流行への警戒が必要になるのか。

あるいはまた、これまでの常識を完全に覆し、新たな恐怖をもたらすのか。専門家は米バイデン政権に対し、「ウィズコロナ」を念頭に置いた長期的対策を求めている。

一方で、現在のパンデミックもまだ終わったわけではない。オミクロンの被害が広がる余地は十分に残されている。WHO(世界保健機関)によると、感染者数は昨年12月末の時点で110カ国に拡大した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州、ウクライナ和平巡る協議継続 15日にベルリン

ビジネス

ECB、成長見通し引き上げの可能性 貿易摩擦に耐性

ワールド

英独仏首脳がトランプ氏と電話会談、ウクライナ和平案

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 「経済は米関税にも耐性示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲う「最強クラス」サイクロン、被害の実態とは?
  • 4
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中