最新記事

世界経済

スティグリッツが今年の世界経済に見る2つの暗雲:トランプと中国

NO WIGGLE ROOM AHEAD

2022年1月3日(月)18時41分
ジョセフ・スティグリッツ (コロンビア大学教授)

インフレに政治問題に米中対立......2021年から 続く危機がアメリカを傾 かせる(ニューヨーク) EDUARDO MUNOZ ALVAREZ/GETTY IMAGES

<混乱と中断と変化にもまれるアフターコロナの世界。インフレと米中衝突という危機に対処する最良の選択は>

パンデミックや政治の風向きにも まれて期待が乱高下した2021年は、 ジェットコースター のような1年だった。新しい年もあまり変わらないだろう。 ただし、 11月にアメリカで行 われる中間選挙は、変動リス クが特に大きくなりそうだ。

こうした不確実性を考えると、自信を持って1年を予測するのは無謀に思えるが、私なりにやってみよう。

まず、新型コロナウイルスは根絶されないまでも、ついに飼いならされるだろう。世界の十分な地域で十分な数の人がワクチンを接種し、大半の地域の大半の人が、2年余り苦しめられてきた恐怖を乗り越えるだろう。

ただし、「封じ込められた」 エネルギーを解き放つプロセスではあるが、世界経済の再起動は、シャットダウンのと きのように簡単ではない。

市場の価格システムは、合理的な人々の意思決定の指針となり得る。分野によって細かい調整も可能だろう。しかし、農業から製造業へ、製造業からサービス業へ、平和から戦争へ(あるいはその逆) といった大きな構造的変化にはうまく対応できそうにない。

自分の仕事の価値を問い直す労働者たち

経済では既に多くの中断が生じており、さらに増える可能性がある。生産と消費のパターンが大きく変わることを覚悟しなければならない。例えば、ZoomでのやりとりやEC(電子商取引)が増えて、実店舗での買い物は減る だろう。不動産部門は、商業用の需要は減少するが、他の分野で盛り返すかもしれない。

労働市場はかつてないほど混乱している。いくつかの変化は永続的なものになるかもしれない。そして、多くの労働者が自分の仕事の価値を改めて考えている。こんなに安い給料で、こんなに劣悪な環境で、こんなにストレスを抱えてまで働く必要があるのだろうか、と。

アメリカでは失業手当の上乗せ措置が終わった後も、労働力不足が続いている。 40年にわたって資本家が経済の大きなパイを奪い続けてきたパワーバランスが、ついに労働者に傾くかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレなおリスク、金利据え置き望ましい=米アトラ

ビジネス

トヨタ、米に今後5年で最大100億ドル追加投資へ

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 7
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中