インドネシア・マレーシアの海洋開発に中国が圧力 五輪ボイコット論争の陰で南シナ海進出を強化
写真で指差している場所が中国の『九段線』とインドネシアのEEZが交差するエリア。ロイター/Beawiharta
<世界が北京冬季五輪の外交的ボイコットの是非に向くなか、中国の覇権主義は安いところを知らず──>
インドネシアやマレーシアが自国の排他的経済水域(EEZ)で実施している海底石油・天然ガス資源の掘削作業に対して中国が中止を求めたり、一方的に海洋資源調査を実施するなど、南シナ海で新たな緊張を生み出していることがわかった。
いずれも中国が一方的に海洋権益の及ぶ範囲として主張している『九段線』に関わるもので、同海域で中国側があえて権益争いを激化する動きを見せていることで極めて挑戦的な動きといえる。
南シナ海は米国とその同盟国である日英豪インドなどが「航行の自由、飛行の自由が保障された自由で開かれたインド太平洋」を唱える海域と重複している。中国がインドネシアやマレーシアと関係緊張化することは、米国との関係悪化も絡み、南シナ海はここへきて一層「波高し」となっている。
インドネシアへの不満と焦燥が背景か
中国政府は在ジャカルタの中国大使館を通じてインドネシア外務省に文書を送り、南シナ海の南端であるインドネシア領ナツナ諸島北方海域でのインドネシアによる石油・天然ガス資源堀削を中止するよう求めた。ロイター通信が12月1日に伝えた。
同海域はインドネシアのEEZに対し、中国が一方的に「自国の海洋権益が及ぶ『九段線』と重複する海域がある」としてかねてからインドネシアに2国間協議での平和的解決を求めている。
これに対しインドネシア側は「同海域で中国との間に協議するような問題は存在しない。従って2国間協議の必要はない」(ルトノ・マルスディ外相)として一切の妥協の余地をみせない強い姿勢をとってきた。
こうしたインドネシアの強い姿勢に不満を高めた中国側が今回掘削の中止を外交ルートで求めたことになるが、背景にはインドネシアへの不満と焦りが中国側にあるとみられている。
『九段線』に関してはフィリピンの提訴を受けてオランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年に「国際法などいかなる法的な根拠はない」と認定しているが、中国側はこれを認めない頑なな姿勢を崩していない。
マレーシア、フィリピンにも「圧力」
また中国は南シナ海を巡ってマレーシア、ベトナム、フィリピンなどとも領有権争いを抱えている。いずれも各国のEEZに対して中国が『九段線』を理由に「中国の領海ないし海洋権益が及ぶ海域」として対立しているのだ。