最新記事

米経済

雇用「絶好調」のアメリカで経済悲観論が広がる理由

BIDEN’S BIGGEST PROBLEM

2021年12月15日(水)19時10分
ジョーダン・ワイスマン(スレート誌記者)
アメリカのガソリンスタンド

ガソリン価格は昨年よりも1ガロン(約3.8リットル)当たり1ドル以上も上がっている JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

<仕事は見つかるのに、暮らしがよくなるとは思わないアメリカ人が増えている。バイデン政権の最大の課題は、物価高。インフレの恐怖は来年の中間選挙も脅かす>

今の雇用情勢はどうですかとアメリカ人に問えば、たいていは「絶好調」という答えが返ってくる。だが経済はと問えば、「最低」という答えが返ってくる。みんな、実は将来を悲観しているからだ。

ギャラップの世論調査によると、「今は仕事を見つけやすい」という回答が歴代最高の74%を記録している。

しかし「経済の先行きは暗い」と考える人も(一部には確実に明るい兆しが見えているのに)増える一方で、その比率は6月の50%から10月には68%に上昇していた。

AP通信とシカゴ大学の研究機関「NORC」による世論調査でも傾向は同じだ。景気は悪いと考える人は9月の45%から10月には54%に増加。

11月の州知事選で民主党が敗北を喫したバージニア州では、投票日の出口調査で約30%の有権者が、この選挙で最大の争点は学校教育でもコロナでもなく経済だと答えていた。

仕事は簡単に見つかるのに、暮らし(経済)がよくなるとは思わないアメリカ人が増えている、なぜか。インフレの不気味な足音が聞こえるからだ。

12月の米労働統計局の報告によると、11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.8%の上昇。1982年6月以来、39年ぶりの高い伸びだ。

ロイターとイプソスによる10月の世論調査でも、米国民の3分の2が「インフレは自分にとってとても大きな関心事」だと答えている。ギャラップの調査でも、インフレを最大の問題と見なす人は増え続けている。

賃上げを上回る物価上昇率

インフレを加速する要因は1つではない。今年の春夏には中古車など高額商品の価格が急上昇した。給付金で懐が温かくなった消費者が買いに走る一方、供給は滞ったからだ。

その後は食品や燃料、家賃・宿泊代などが次々に上がった。その後、いったんは価格が安定したように見えたが、10月になると事態は急転。CPIは前月比0.9%増という衝撃的な上昇を示した。

食品や燃料、家賃、中古車価格などの要素を除いても、インフレ率は0.6%だった。

国民がこれほどインフレを心配する背景には、過剰な報道があるかもしれない。とりわけ保守系のFOXニュースは、これをバイデン政権批判の格好の材料とみている。

しかし、それだけではない。最近は思ったほどに賃金が増えないという事実に、今の人たちは気付き始めている。

だから食料品やガソリンの値段が少しでも上がり続けると心配になる。子供が生まれるとなれば、車の買い替えは先送りにするしかないと考えてしまう。

【話題の記事】バイデンは老い過ぎている、そのせいで人が死ぬ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏当局、ディープシークに質問へ プライバシー保護巡

ビジネス

ECB総裁、チェコ中銀の「外貨準備にビットコイン」

ビジネス

米マスターカード、第4四半期利益が予想上回る 年末

ワールド

米首都近郊の旅客機と軍ヘリの空中衝突、空域運用の課
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 4
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 5
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中