最新記事

パンデミック

オミクロン株はデルタ株より広がるか ポイントは感染速度

2021年12月1日(水)10時38分
オミクロン株のイメージ

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」とそれがもたらす影響について、科学者が解明を急いでいる。写真はオミクロン株のイメージ。27日撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」とそれがもたらす影響について、科学者が解明を急いでいる。その中で最も重要な疑問の1つに挙げられるのは、オミクロン株が現在世界的に流行の主流を占めるデルタ株に置き換わるのかどうかだ。

世界保健機関(WHO)は26日、その数日前に南アフリカで最初に見つかったばかりのオミクロン株を「懸念すべき変異株」に指定。世界中の研究者と協力してオミクロン株がパンデミックに及ぼす影響の把握を進めており、数日から数週間で新しい発見があるだろうとの見方を示した。

オミクロン株がワクチンの防護機能をすり抜けるのか、あるいは重症化リスクは高まるのかといった多くの疑問は、まだ解き明かされていない。しかし、オミクロン株の広がりが比較的抑えられたままであれば、そうした性質があったとしても懸念の度合いはずっと小さくなる。

ロイターが取材した複数の疾病専門家の話では、オミクロン株がワクチンの効果を弱めると考える確固とした根拠は、既に存在する。

例えば、オミクロン株にはベータ株とガンマ株が持っているワクチンの効き目を減らす複数の重要な変異が、同じように見られる。さらにオミクロン株は特異な変異が26カ所あり、その多くはワクチンの抗体が標的にしている。

もっとも、感染拡大のスピードという面では、デルタ株が他のいかなる変異株よりもずっと急速だった。コーネル大学ウェイル・メディカル・カレッジのジョン・ムーア教授(微生物学・免疫学)は「だからこそ、オミクロン株がデルタ株との比較で、どの程度感染力があるかが問題になる。これはわれわれが知る必要がある非常に重大な要素だ」と指摘した。

ただ、オミクロン株を巡るあらゆる疑問のうち、感染力は最後に答えが分かる部類になりそうだ、と専門家は話す。科学者が今後注視するのは、公共データベースに報告されるデルタ株感染者が、オミクロン株感染者に置き換わり始めるかどうかだ。感染スピード次第になるものの、3─6週間でそれが起きる可能性があるとみられている。

もっと早く得られる情報もあるだろう。ベイラー・カレッジ・オブ・メディシンのピーター・ホテッツ教授(分子ウイルス学・微生物学)は、重症化リスクに関しては2週間以内にもっと理解できるようになると予想した。

現時点では、オミクロン株感染者の症状は極めて軽いという声がある半面、南アの病院で何人か深刻な状態だと伝えられるなど、報告にばらつきがあるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米8月の貿易赤字、23.8%減の596億ドル 輸入

ワールド

独財務相「敗者になること望まず」、中国の産業補助金

ワールド

EU、AIとプライバシー規制の簡素化案を公表 厳格

ワールド

26年サッカーW杯、低調な米国観光業に追い風 宿泊
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中