最新記事

デジタルトイ

たまごっち25周年、米で脚光再び 当時は約1日で1万個売った店も

2021年12月27日(月)16時50分
青葉やまと

1990年代「たまごっち」は、世界的ブームとなった REUTERS

<一緒に暮らす喜びと、トラウマ級の別れ。小さな本体に感情のすべてを詰め込んだたまごっちが、海を越えてアメリカでも幅広い世代に愛されている>

バンダイが1990年代に売り出した「たまごっち」は、日本の女子高生を中心に空前のデジタルペット・ブームを巻き起こした。どこへでも連れてゆけるバーチャル・ペットに皆が夢中になり、店頭では品薄もめずらしくなかった。近年では小学生女子などにも層が広がるなど、根強い人気が続く。

たまごっちはその名のとおり、たまご型の小さなおもちゃだ。液晶に登場する不思議な生物「たまごっち」を眺め、世話をする。相棒となったたまごっちはピーピーと鳴き、ミニゲームを通じたふれあいを求める。また、「ごはん」「おふろ」「トイレ」などの世話をリアルタイムで行うスタイルもユニークだ。

育て方次第で仲良くなれたりグレてしまったりと、人間のような反応でユーザーを夢中にさせてきた。2021年11月に発売25周年を迎えたが、いまでもスターウォーズのR2D2などをモチーフにした新型が出ており、息の長い人気を誇る。こうした熱狂は国内に留まらず、アメリカでも幅広い世代のハートを鷲掴みにしている。

NYのおもちゃ店で1万個完売

たまごっちは96年の日本発売に続き、翌97年の5月にアメリカデビューを果たした。名前は日本語そのまま「Tamagotchi」だ。店頭に並ぶやいなや、現地でも一大ブームを巻き起こす。

当時の騒動を報じたニューヨーク・タイムズ紙によると、マンハッタン5番街の大手高級玩具店「FAOシュワルツ」のフラッグシップ・ストアでは、1万個の在庫を用意して来客に備えたという。ところが需要に到底追いつかず、発売からおよそ24時間で完売となる。西海岸のサンフランシスコの店舗にも需要が殺到し、発売から数時間で3000個を売り切った。

同紙は発売3日目の時点でこのブームを報じ、「実際のところ、初動2日間の売り上げを参考とするならば、日本を席巻したたまごっち熱はアメリカにも完全に根付いたといえそうだ」と驚きを隠さない。

突然の別れはトラウマ級

人気の秘密は、ペットとふれあう幸福だけでなく、悲しみも再現した点にあったのかもしれない。現在27歳になるアメリカ人愛好家の女性は、米スミソニアン誌に対し、幼い日に姉と一緒にショッピング・モールでたまごっちを手に入れた日のことをはっきりと覚えている、と語る。

彼女たちはそれから付きっきりで世話をしたが、ある日姉のたまごっちは死んでしまった。「ちょうど私はキッチンに立っていました。そのとき姉が、彼女のたまごっちが死んでしまったことに気づいたのです。彼女にとってどれほどトラウマとなったか、はっきりと覚えています。」 同誌はたまごっちの魅力について、「幸せな瞬間も悲しみですらも、すべてを持ちあわせたひとつの完結した世界」がそこにはあった、と分析する。

なお、命の重さを教えてくれたたまごっちだが、比較的新しいバージョンでは死なないように演出が変更されている。世話をしないでいると代わりに、悲しげな置き手紙を残して家出してしまう。

堅調な人気 プレミア付きモデルも

現在でもアメリカでの人気は根強く、例としてオンラインのコミュニティ「TamaTalk」は10万人近い登録者を擁する。人気のモデルにはプレミアがつき、元は3000円ほどの商品が2万円近い値で取引されることもめずらしくない。

スミソニアン誌は、かつて授業中にプレイに興じて叱られた子供たちが、今になってノスタルジーに惹かれているのでは、と分析する。「ユニークなゲーム性と、コレクションとしての果てしないバリエーション」が冷めない熱を支えているのだという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中