最新記事

日本社会

女性の生涯未婚率、東京を抜いて1位になった「意外な県」とは?

2021年12月17日(金)19時00分
荒川和久(独身研究家、コラムニスト) *東洋経済オンラインからの転載

男女の生涯未婚率のエリア差をみてわかるのは、仕事を求めて若年層の人口流入の多い都市部においては、女性の生涯未婚率が高くなり、反対に、若年層の人口流出の激しい地方においては、男性の生涯未婚率が高くなるということです。

勘違いしてはいけないのは、生涯未婚率はあくまで45~54歳の未婚率です。そして、2020年の値が天井ではありません。2040年に男女とも最高値を出す推計がされています。つまり、今から20年後の生涯未婚率が一番高くなるのです。2040年の時に45~54歳ということは、現在2021年時点で26~35歳の若者男女が、生涯未婚の最高記録を出す世代となるということにほかなりません。

まさに、この記事(『恋愛結婚の人は大概25歳で出会っている残酷現実』)で限界結婚年齢についてお話ししましたが、その限界年齢直前の世代によって20年後の未婚率は決定されるし、それは20年後の未来が今ここで決定されているといっても過言ではないのです。

少子化や人口減少の危機がことさら騒がれていますが、今後しばらくは、具体的にいえば2100年頃までは、出生や人口が増える見込みはありません。1990年代に第3次ベビーブームが来なかった時点で、それ以降の若年人口は減り続けているわけですから、万が一全員が結婚して出産したとしても絶対数が減っているので増えないわけです。

男性の「草食化」などのせいにしてはいけない

もちろん、1980年代までの皆婚時代に戻ることが是であるとも思わないし、戻ることも不可能です。結婚しない選択や、子を産まない選択があってもいいでしょう。一方で、本当は結婚したいのに、子どもがほしいのにできないという悩みを抱えている若者も多いことは確かです。

その要因のうちのひとつが経済問題であることは間違いありません。30年間も平均給与があがらない雇用環境を突きつけられ、たとえ正社員であっても年収300万円に達しない若者も大勢います。正社員として雇用されたとしても「45歳定年制」などといわれ、自分が40代を過ぎた時に安定した収入を維持できているか不安ばかりが煽られています。

加えて、子育てや教育費など結婚後にはより一層のお金がかかるという情報も溢れています。そんな状況下では、「経済生活たる結婚」に踏み切れない若者がいたとしてもそれを責めることはできるでしょうか。それを「草食化」などという根拠のない価値観のせいにして、若者を責めても意味がないでしょう。

結婚や子どもを産みたい若者を「お金がないから」という理由で諦めさせないよう、大人たちのお膳立てが求められているのではないでしょうか。

荒川和久(あらかわ かずひさ)

独身研究家、コラムニスト
ソロ社会とソロ文化及び独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)など。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら。
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ急がず 緩和終了との主張も=10月理

ワールド

米ウ協議の和平案、合意の基礎も ウ軍撤退なければ戦

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中