最新記事

核軍拡

世界に核戦争をもたらすのは中国かアメリカか

China Says U.S. Bringing World Closer to Nuclear War After U.S. Military Report

2021年11月8日(月)10時36分
トム・オコナー
弾道ミサイル実験

アメリカの弾道ミサイル実験(8月11日、カリフォルニア州) MICHAEL PETERSON/U.S. ARMY SPACE AND MISSILE DEFENSE COMMAND

<「先制不使用」という原則論を盾にしながら、1000発の核弾頭、既存のミサイル防衛網をかいくぐる極超音速兵器の開発、陸海空軍すべてで核を運用する「核のトライアド」などの実績を着々と積み上げる中国>

米国防総省が中国の軍事動向について発表した最新の報告書を受けて、中国のある当局者は本誌に対して、世界を核戦争に近づけているのは中国ではなくアメリカだ、とのコメントを寄せた。

米国防総省は11月3日に「中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書」2021年版を発表した。同報告書は、中国および世界最大規模の軍隊である人民解放軍についての幅広い評価を記したものだ。

注目すべき所見のひとつが、中国は「核戦力拡大のペースを加速させて」おり、核戦力の「近代化」と「多様化」を目指しているという部分だ。報告書は、中国が現在保有している核弾頭の数を「200発台前半」と見積もっており、今後さらに増える見通しだと指摘。また、中国が陸海空の戦略的プラットフォームを開発中であることにも言及している。

「中国は核戦力の拡大を加速させており、2027年までに最大700発の核弾頭の保有が可能になる可能性がある」と報告書は分析する。「中国は2030年までに少なくとも1000発の核弾頭の保有を目指している可能性が高い。これは我々が2020年に予測したペースと規模を上回っている」

核の脅威はアメリカの方だと反発

報告書が核戦力の拡大について特に具体的に言及したのは、アメリカに影響を及ぼす可能性があるからだ。報告書はまた「アメリカを脅かすことができる地上発射型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載される弾頭」について「今後5年間で約200発に増える見通しだ」とも述べている。

在米中国大使館の報道官は同報告書の発表を受けて、中国の戦略能力について異なる見方を示した。

「中国は常に自己防衛のための核戦略を実行してきた」と彼は本誌に述べた。「中国はいかなる時、いかなる状況下においても核兵器の先制不使用の方針を厳守している。非核保有国や非核地帯に対して、核兵器を使用することも、あるいは使用すると脅すこともないと断言する。中国はいかなる形の核軍備競争にも参加したことはなく、国外に核兵器を配備したこともない」

同報道官はまた、アメリカの方が中国よりもはるかに多くの核兵器を保有しており、保有する核弾頭の数は約5500発にのぼるはずだと指摘。「周知のとおり、アメリカは世界最大規模にして最新鋭の核兵器を保有している」と述べた。「アメリカは国際合意に違反し、核軍縮に関する特別な責任を果たすことを拒んでいるだけでなく、核軍縮に故意に『背き』、またそこから『手を引いた』のだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米メーシーズ、第4四半期利益が予想超え 関税影響で

ワールド

ブラジル副大統領、米商務長官と「前向きな会談」 関

ワールド

トランプ氏「日本に米国防衛する必要ない」、日米安保

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中