最新記事

中国軍事

中国潜水艦隊の脅威にパニクった周辺諸国が買いあさる軍備とは

China's Submarine Fleet Is Catching Up to U.S., Causing Partners to Panic

2021年11月2日(火)19時03分
ナビード・ジャマリ/トム・オコナー

だが中国側は、対空攻撃能力も強化している。

人民解放軍は、中国本土だけではなく南シナ海にある複数の島にも、地対空ミサイルシステムを配備している。中国軍の艦船はP8哨戒機にも目を光らせており、2020年2月には、米海軍のP8A哨戒機が、中国海軍の駆逐艦からレーザーを照射されたとして同駆逐艦の乗組員らを非難した。

アメリカのパートナー諸国の多くは、P8哨戒機の調達に加えて自国の潜水艦隊の強化も行うことで、現代の海洋軍事環境に適応しようとしている。実際、アメリカのパートナー諸国と中国は兵器開発競争を展開している状態で、中国の研究調査機関「南海戦略態勢感知計画(SCSPI)」の胡波主任は、この競争においては中国の方が有利な状況にあるとの見方を示した。

「アジア太平洋における水中での軍拡競争は激しさを増している。アメリカやその他の国々による開発を受けて、中国がますます水中部門に投資を行っている状況だ」と胡波は本誌に述べ、さらにこう続けた。「中国が並外れた規模の資源や人員を総動員できることを考えると、アメリカにとって今後、状況はさらに困難になる可能性がある」

「中国の地上部隊が過去20年間で大きく発展したことが、その証拠だ」

潜水艦からのSLBM発射能力

したがって軍拡競争は続く。

オーストラリア、イギリスとアメリカは9月に新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を発表。アメリカとイギリスが、原子力潜水艦を初導入するオーストラリアを技術支援する計画も、合わせて発表された。これを受けて、中国はすぐに反発を表明。米英豪の3カ国の動きは地域の不安定化を招くと非難した。オーストラリアと先に潜水艦共同開発を約束していたフランスとの契約破棄を覚悟の上の決断だった。

また9月には、アメリカの同盟国である韓国がSLBM発射実験を成功させ、非核保有国として初めて、潜水艦からのSLBMの発射能力を持つことになった。その数週間後には、北朝鮮がSLBMを発射。核保有国である北朝鮮もまた、潜水艦の戦闘能力に投資を行っていることを示した。

韓国国防部の報道官は本誌に対して、「国防部は潜水艦の活動も含め、北朝鮮の軍事状況を注意深く監視している」と述べた。

韓国は、アメリカと強固な同盟関係を維持する一方で、中国とのつながりも維持してバランスを模索するようにもなっている。中国の同盟相手である北朝鮮に対しても、抑止と外交の両面で慎重な姿勢を取っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中