最新記事

習近平

中国「月収1000元が6億人」の誤解釈──NHKも勘違いか

2021年11月9日(火)16時58分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

一人っ子政策の時でも、農家や少数民族地域では特例措置もあって子供数が増えている場合が多く、貧困なほど家族数が多いという皮肉なデータさえある。

なぜなら貧困家庭は子供に高学歴をそれほど強くは求めない傾向にあり、都会では何としても一人の子供に全ての財産を注いで高学歴をと渇望している家庭が多いので、都会では一世帯あたりの人数は少ない傾向にある。それは不動産価格高騰の最大の原因にさえなっている(参照:9月22日コラム<中国恒大・債務危機の着地点――背景には優良小学入学にさえ不動産証明要求などの社会問題>)。結婚しない男女も都会の方が多い。その分だけ「一人当たりの平均月収」を押し上げる。

なぜ「共同富裕」なのか

ところで、冒頭に引用したNHKの記事のメインテーマは「共同富裕とは何か」なので、最後にそのことに関しても少し触れておきたい。

当該記事にあるように、たしかに毛沢東時代に「共同富裕」という言葉を使ってはいる(1953年における中共中央会議などにおいて)。しかし、10月12日のコラム<習近平の「共同富裕」第三次分配と岸田政権の「分配」重視>の後半で書いたように、むしろ、鄧小平が言った「先に富める者が先に富み、富んだ後に、まだ富んでいない者を牽引して共に富んでいく」の後半部分を実行しているだけだとみなすべきだろう。

事実、そのコラムにも書いたが、習近平自身が「かつて一部分の者が先に富むことを許したが、それは先に富んだ者がまだ富んでない者を必ず率いて助け、ともに富んでいかなければならない」と言っている(2021年8月17日に開催された中央財経委員会第十次会議)。

ここで無理矢理に毛沢東が主張したというところに持って行くのは、「習近平は毛沢東を超えようとしている」と言いたいからだろうが、習近平が「毛沢東時代の革命精神を忘れてはならない」として「無忘初心(初心忘るべからず)」を党のモットーの一つとしているのは、鄧小平の陰謀によって父・習仲勲が失脚し、16年間もの長きにわたって投獄・軟禁・監視生活を余儀なくされたからだ。

「革命の地」である「延安」は、習近平の父・習仲勲が築いた。しかし鄧小平は習仲勲の影響を薄めたいために、「延安」や「毛沢東の長征」を語らせなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中