映画『アメリカン・スナイパー』のネイビー・シールズ狙撃手と上官の、「殺害」プレッシャーの局面
EXTREME OWNERSHIP
ネイビー・シールズの狙撃手クリス・カイル CHRIS HASTON-NBCUNIVERSAL/GETTY IMAGES
<リーダーはプレッシャーに動じてはいけない。そうした局面では何に基づいて行動すればいいのか――米軍最強部隊「ネイビー・シールズ」指揮官が経験を基にまとめたリーダーシップのあるべき姿>
2014年の映画『アメリカン・スナイパー』は、イラク戦争に4度従軍したクリス・カイルの自伝を下敷きにしたもの。カイルは米軍最強部隊の1つ、海軍特殊部隊「NAVY SEALS(ネイビー・シールズ)」の伝説的な狙撃手だった。
イラク戦争は2003年に始まったが、2006年のラマディの戦いでネイビー・シールズの精鋭部隊「ブルーザー」を率いたのがジョッコ・ウィリンクとリーフ・バビンだ。バビンはカイルの上官である。
ウィリンクとバビンが、戦場での経験を基にリーダーシップのあるべき姿をまとめた『米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)伝説の指揮官に学ぶ究極のリーダーシップ』(邦訳・CCCメディアハウス)という本がある。全米で230万人の読者を獲得し、世界29言語で刊行されている。
最前線で命のやりとりを繰り返す日々の中で、部隊のメンバーを生き残らせつつ任務を達成するために彼らが学び取ったリーダー術は、ビジネスや日常生活でも生かせるはずだ。
ニューズウィーク日本版では、10月5日号の「ビジネスに役立つ NAVY SEALS 12のリーダー術」特集で同書の抜粋を掲載。
以下にその抜粋の一部を掲載する(第3回)。
※第1回:イラクの戦場でミス続出、「責任を負うべきは私だ」と言った指揮官から学ぶリーダー術
※第2回:ネイビー・シールズ地獄の訓練で「嘘だろ?」...衝撃の展開が示したリーダーシップの重要性
【Part 3】不透明な状況でも決断力を
「建物127の2階の窓に、スコープ付き武器を持つ男がいる」と、クリスが言った。
これは、やや珍しいことだ。クリス・カイルは、チャーリー小隊の尖兵で狙撃手長。つまり、小隊きってのベテラン狙撃手で、シールズ・チームでも指折りの射手だ。
前回のイラク派兵でも、「レジェンド」とふざけてあだ名されていたが、ラマディでは狙撃手作戦の牽引役として、敵の戦闘員を次々と殺害していた。そう、米軍史上最も活躍した狙撃手たちをも、確実にしのぐペースで。
クリス・カイルを偉大な狙撃手にしたのは、誰よりも優れた射手だからではない。狙撃用照準眼鏡(スナイパー・スコープ)の十字線を1~2時間も見つめれば、ほかの隊員なら飽きて集中力を失うはずだが、クリスは自制心を保ち、警戒を怠らなかった。
確かにクリスはツイていたけれど、そのツキをもたらしていたのは、たいてい彼自身だった。
クリスもほかのシールズ射手たちも、相手が「武器を持って敵対行為を行う悪党だ」というPID(身元確認)が取れ、「敵意がある」という合理的な確信が持てた場合は、戦う許可を得ている。私(リーフ・バビン)の承認を得る必要はないのだ。
だから、彼らが承認を求めるときは、敵意があるという合理的な確信が持てないときだ。