最新記事

世界に学ぶ至高の文章術

「君は私の肝臓!」愛の言葉にもテンプレがある日本語をもっと自由に【外国人ライター座談会】

2021年10月22日(金)10時44分
ニューズウィーク日本版編集部

神様いわく、リズムが大事

パックン 読みます! マライさんは?

マライ 2人います。インタビューでご一緒した中国専門家でライターの安田峰俊さんの記事のまとめ方、そのワザを身につけたいなあって。コンパクトかつ内容のある文章の書き方の本当にプロなので、参考にしたいなと思ってます。

すごく尊敬している方がもう一人いて、酒寄進一っていう、友人の翻訳家でドイツのミステリー小説を日本語に訳している人です。何が凄いかって、酒寄さんが訳した日本語は、ドイツ語と読んだ印象が一緒なんです。リズムが同じなんですよ。だからやっぱりリズムってすごく大事なのかなって思っていて。それさえ同じであれば、作家さんが表現したかった世界だけじゃなくて、言葉も同じ動きをする。ホントに、神様のような人です。

パックン 神様とおっしゃった方の、翻訳のコツは何なんですか?

マライ 直接聞いたんですけど、基の本を読んだ後、それを見ないで一回訳すんですよ。

パックン 見ないで訳す!?一回読んで、その印象を思い出しながら書くわけ?

マライ ひとつの章とかをね。あとは作家さんにどういう音楽を聴いて書いたかなどを聞き出して、同じ音楽を流して、同じリズム感を再現できる環境を作るそうです。彼にしかできないことかもしれない。読み直して、微調整ももちろんするみたいですけど。

パックン いや、面白いですね。原作に執着しすぎないことが大事かもしれないですね。

マライ そうですね。私たちって、脳内に、ワープロが2つ入ってて、私の場合だと、ドイツ語と日本語は同時には動かせない。だから、日本語の文章書くときは、完全に日本語のやつに切り替えてます。

ハンナ そうですね。

パックン ハンナさんもそうなんですね。シャハランさんはどう? 日本語で考えて、日本語で書いているんですか?

シャハラン 私はペルシア語で全然考えてないですね。

パックン 僕も基本的には考えないですね。でもさっきみたいに、ミューズとか、突然ぴったりの言葉が、日本語で考えてても思い浮かぶときもある。でもそれって歴史上、繰り返されてることだと思うんです。外国語にある概念を少しずつ日本語に取り入れる、その歴史に参加してるのかなと。大げさに言うと、そう感じます。

マライ たしかに。

パックン 僕は、タイム誌で面白コラムを書いていた、ジョエル・スタインさんとかのように、英語で面白い文章が書ける人のようになりたいと思ってた。でも同じような書き方は、日本語では通じないんですよ。シニカルに書いても、「この人怒ってるんだ」とか素直に読み取ってくださる。いやいや、皮肉なのに!そういうストレスを溜めたときもけっこうあったんですけど、それからは例えば、ナンシー関さんとか、日本語で面白い文章を書く人の文を参考にするようにしましたね。あと、池上彰さん。彼の文章もすごく分かりやすくて、小学生が読んでも、大人が読んでも勉強になる。そういうはっきりした明快な文章を目指すようになった。

「恨み」と「恨」の違い

パックン ちょっと話は飛びますが、自分の言語にあって、日本語にない表現も教えてください。僕はさっき言ったミューズとか、英語にあって日本語に訳しづらいけど、概念としてあって欲しいと思う言葉を文章に差し込むときがあります。アフガニスタン戦争に関するコラムで「コラテラル・ダメージ」っていう英語の表現を入れたんです。つまり、テロ組織への攻撃に巻き込まれた民間人の被害を、「周辺的ダメージ」と訳すのはどうかと思ったのですよ。その概念がアメリカ社会で出回ってるなら、知られるべきだと思って。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スウォッチ、売上高の好調な勢い強調 25年通期利益

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安進行が支え 輸出株上

ビジネス

FRB次期議長指名ウォーシュ氏、金融規制緩和を推進

ワールド

メドベージェフ氏、トランプ氏を称賛 米潜水艦の脅威
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    【銘柄】「大戸屋」「木曽路」も株価が上がる...外食…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中