最新記事

世界に学ぶ至高の文章術

日本語を職業にする外国人だからこそ分かる「日本語の奥深さ」と「文章の極意」

2021年10月22日(金)10時41分
ニューズウィーク日本版編集部

パックン 日本のプロの通訳の方って、空気を読んで相手側言ってないことでも足したりしない? 少なくとも英語の場合、それが多い。そういう「社会の潤滑油」になるような言葉が、日本語で暮らす上で欠かせないスキルだと思うんですよね。相手はこう思っているのだろう、という深読み。読者が深読みしていることを念頭に入れないと、しつこい文章を書くようになるんですよね。英語だと、はっきりと長々と書いてもいいけど、日本語では省略しないと、しつこく感じると思います。ハンナさんはどう思われますか?

ハンナ 私は短歌をやっておりまして、千四百年の歴史のなかで、母国語話者ではない、唯一の歌人としてデビューをして、新人賞も受賞させていただいていて。

マライ かっこいい!

ハンナ ありがとうございます。短歌というと伝えづらい、難しいところから日本語を学び始めたので、逆に論文の日本語って、意外とそこまで難しくなかったんです。余計な言葉を全部引いて、リズムに合わせて31文字をやりなさい、って言われて短歌を作り続けたので、鍛えられましたね。パックンの言う「うるさくない言葉」っていうことの大切さをすごく極められたというか。でも最初はやっぱり全く伝わらないんですよ、31文字しかないから。そこをすごく苦労しながらやってきました。

分かりやすさの判定法

パックン なるほどね。簡潔な文章の「極み」が、短歌とか俳句ですよね。日本人にチェックされたときに、納得いかない、これ絶対このままがいい! っていう、自分のこだわりってありますか?

ハンナ 私はメッチャありますね。短歌を作ったら、まず日本の方々に読んでもらって、伝わっているか確認するんですね。そのときにマネジャーさんから、「伝わらない」って言われて口げんかしたりします。

パックン もうマネジャーチェック、しなくていもいいんじゃない(笑)

ハンナ でも基本的には、助詞の細かさ、ひとつの「が」を「は」に変えた瞬間に世界観が変わったりする所が短歌ではすごく大事なので、そこは素直に受け入れようとしてます。

パックン なるほど。マライさんとか、シャハランさんはどうなんですか?

マライ 今のハンナさんの話、すごく分かるなあ。「伝わらないよ」って言われると、けっこうムカつくかも。あなた自身の日本語的にはそれがベストじゃないのかもしれないけど、正解があるわけではない。新しい日本語あっていいと思うんですよ、私は。

ハンナ メッチャ共感します。マライさん。

マライ ありがとうございます。私はドイツ人なので、いくら日本語を勉強したって、母語話者にはかなわない部分は絶対あるはずですよね。語彙も表現も。だったら、あえてそこを目指さずに、自分の日本語を作って、楽しいなあって思う日本語を書いた方がいいんじゃないかなあ。日本人の読者に対しても言いたいんですけど、正しい日本語を目指すだけではなく、自分の日本語、自分ならではの表現、って絶対あるはず。そっちでいった方がいいんじゃないかなって、ちょっと開き直っています。

パックン それいいっすね。僕は日本語覚えたてのころは、なんで「ムカムカ」と「ムラムラ」は違うのか、音はほとんど一緒で、どっちでもいいじゃん! って思っていたころもあって。正しい擬音が思い浮かばないときは、適当に「いやあ、今日はちょっと、ちょぼちょぼしてて!」とかに作ってた。まあ、通じないときは通じないですね。でも僕は、日本人に合わせていいかな、とこの数年でまた思うようになってきたんですよ。50歳で、少し丸くなったかもしれないですけど。シャハランさんはどうなんですか?

シャハラン あまり知らない人に見せて、「ダメでしょ」と言われたら、私もムカつくんですけど、でもほぼ毎日一緒にいる妻に言われると、「ま、そうですね」って言うしかないときは多いです。私はペルシア語も自分の娘に教えているので、言葉についていっぱい妻としゃべるんですよ。

パックン 素直に「かしこまりました」と。

シャハラン そうです。でも、完全に合わせると言うよりは、「停戦」ですね。戦って、これでオッケーにしましょう、みたいな感じ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃「2週間停止で合意」 10日

ワールド

ロシア、自国産エネルギーに強い引き合い=大統領府

ワールド

北朝鮮、7日に平壌近郊から飛翔体発射=韓国軍

ワールド

イラン停戦、ホルムズ海峡開放された時点で発効と米当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中