最新記事

世界に学ぶ至高の文章術

日本語を職業にする外国人だからこそ分かる「日本語の奥深さ」と「文章の極意」

2021年10月22日(金)10時41分
ニューズウィーク日本版編集部

パックン それぞれの母国語の特徴もふまえて、日本語をしゃべる段階、書く段階で引っ掛かったところはどこですか?

マライ 助詞。

パックン やっぱり。

マライ 今も、引っ掛かりまくってますけどね(笑)。だって、「は」と「が」の違いの研究書があるぐらいですよね。大学で学んだりもしたんですけど、一般的なルールを遥かに超えてディープな世界だと思う。どういう時は「は」で「が」なのかっていうのが、分からない。

パックン あれは全部、意地悪なんです。あと編集者は、仕事をしたくて助詞を変えてるだけ。ホントは放っておいていいはずなんです。あと、僕にとっては受動態と丁寧語が重なるところがけっこうネック。いつもどっちかな、と思うんですよ。「食べられますか」と聞かれると「オレを食わないでくださいよ!」みたいな。日本人は聞き分けることができるんだけど、僕はいまだに引っかかる。あとは、同音異義語。「汚職事件」と「お食事券」、どっちなんだだって。

マライ 「病院」と「美容院」みたいな?

日本語は省略しないと気持ち悪い

パックン そうそう。ハンナさんはどうですか。引っ掛かったところ。

ハンナ やっぱり文法的に、韓国語と日本語が近くて「が」とか「は」とか、私たちも一緒なんですよ。でも例外があって、一番初めに韓国人がよくミスするところですけど、「これが好きです」の「が」が、韓国語だと「を」になるんですね。「あ、そうなんだ」と言いつつ、私は「あなたを好きです」ってよく言ってた。

パックン いや、「あなた『を』好きです」って言われた人が、「いやいや、『が』だよ」とか言ってきたら、好きでなくなるね。

一同 (笑)

パックン もう好いていただければ嬉しいですよ。どんな文法でも。

シャハラン たしかに。そこに文法はいらない。

パックン そんな男とは別れなさい(笑)じゃあ今度は文章の日本語。みなさん、きれいな文章書けるようになるには、相当苦労したんじゃないかと思うんですけど、母国語で文章を書くのと、日本語で書くのと、何が違うのか教えてください。じゃあ、マライさんから。

マライ やっぱり、文法的なところ。ドイツ語も英語もそうだと思いますけど、省略できない部分がある。例えば、ちゃんと主語を入れて書く。通訳の仕事でも、日本人側が主語をけっこう端折って言ったりしていて、こっちで補わないといけない。複数形か単数形か、とかも。そういうのが全部そろってないと文章が成り立たないのがドイツ語で、ある意味すごく面倒くさい言語なんです。

パックン でも日本語で書くときは、それを省略しないと、すごく気持ち悪い文章になるんですよね。

マライ そうなんですよ。だから例えば、ドイツ文学を日本語に訳すときに、相当変えないと読みづらい。「なんでそんなはっきり全部書くんだ?研究書かよ」みたいになる。私は、文が長ったらしいってよく言われます。やっぱり日本語で書くときは、もっと省略した方がいいかもって、もう一回読み直したりします。

パックン ああ、そうなんだ。

パートナーに見てもらうという方法

マライ 「ここ全然短くできるよね」って言われる。「ドイツ人としては、ここがすごく言いたいんだけど......」と思っても、「いや、いらないから」みたいなことはよくありますね。

パックン 誰に編集されるんですか?

マライ もちろん、そのときどきの編集担当の方ですけど、うちの(日本人の)夫は、すごく文章が上手い人で、彼にも絶対見せますね。「長いわ」ってなります。

パックン 僕も、今はそこまでじゃないですけど、以前はけっこう妻に見てもらっていて。「長いわ」は、まあ我慢できるんですけど、「面白くない」って言われると、一番傷つくんです。

一同 (笑)

パックン 「親しき仲にも礼儀あり」って知らないのか!って、いつも奥さんに思うんですけどね。シャハランさんはどうですか? 苦労した点。

シャハラン 翻訳の仕事をやるときもあるので、マライさんと同じ問題があるんです。ペルシア語は日本語で1行で書くところが2、3行になる。

マライ ペルシャ語はなんか長いらしいですね。

シャハラン 漢字の特色なのかもしれない。漢字の言葉はペルシア語にそのまま訳せず、意味を明確にしないといけないときがあります。あとは、明文化された(書き言葉の)ルールがペルシア語にはあるので、そういうのも苦労しますね。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産が九州工場で1週間約1200台減産へ、中東情勢

ワールド

UAE、原油生産が半分以下に ホルムズ海峡封鎖で油

ワールド

アフガン首都病院にパキスタンの空爆、400人死亡=

ワールド

英、若年層の雇用促進策発表 10億ポンド規模
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中