中東は世界の2倍ペースで気温上昇中...無策な政府、紛争、貧困という絶望
NO LONGER LIVABLE
イラン南西部フゼスタン州では、水不足に抗議するデモ隊が道路を封鎖しタイヤを燃やす事態に。当局の発表では州治安部隊の発砲で少なくとも3人が死亡したというが、実際はもっと多いと人権活動家らは指摘する。
人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは「ソーシャルメディア上でシェアされている動画には、治安当局が火器や催涙ガスを使用しデモ隊に発砲する様子が写っている」として調査を要求している。
シリアでは06~11年の干ばつで農村部と都市部の社会経済的格差が拡大し、それも内戦の一因になったと考えられている。
イエメンでは内戦の長期化が水危機を深刻化させているようだ。イエメンは地下水源の急速な枯渇で水不足にあえいでいる。人口1人当たりの年間水資源賦存量(人間が最大限利用可能な水の量)は世界平均の7500立方メートルに対し、わずか120立方メートル。以前は水資源省が井戸の掘削に条件を課していたが内戦で監視できなくなり、もともと乏しい水資源が過去10年間で急速に枯渇した。
地域協力によって中東の水不足を軽減し、カーボン・フットプリント(CO2排出量)を削減することが可能だと、ストックホルム国際平和研究所のヨハン・シャール准上級研究員は主張する。
「地域協力という点では共通の水資源の利用と管理について合意することが何より重要だ。極端な気象現象が原因で、今後これらの水資源は、河川も地下水も、一層希少かつ不安定になるだろう」と、シャールは言う。
「水に関して2国間の国境を超えた合意はほとんどなく、複数の国にまたがる河川の流域全体の合意は皆無だ。アラブ連盟の水資源閣僚会議は数年前に共通の水資源に関する地域条約を起草したが、批准されなかった」
長引く紛争が地域協力を阻む
中東諸国は紛争で手いっぱいで、共通資源の利用をめぐって協力するどころではない。「どの国も(温室効果ガスの)排出削減のための投資はわずか」だとシャールは言う。
「その上、紛争や社会不安や制裁が気候変動に適応するニーズと能力に影を落としている。国民は紛争で家を失って困窮し、気候変動の打撃を受けやすくなる。社会不安は、長期的な計画と投資のためのリソースと政策の余地を減少させる」
気候変動と「アラブの春」がもたらした革命・内戦との関連性が盛んに論じられている。だが、お粗末な統治、ずさんな環境管理、都市化、水道やエアコンなどの設備が不十分な地域の社会不安──とも明らかに関連がある。気候変動の影響で生活が苦しくなれば、これらの都市で何が起きるか、考えると恐ろしい。
「ただでさえ紛争に苦しむこの地域が極端な気候に襲われると、その結果、例えば移住を決意する人が増える」と、マックスプランク研究所のレリフェルトは指摘する。新たな中東危機の始まりだ。
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