最新記事

米社会

大学レポート代筆業、コロナ特需で大儲けした筆者が見た「闇」

Learning From Cheating

2021年8月20日(金)18時26分
元レポート代筆ライター(匿名)

210824P52_EDH_02.jpg

PHOTO BY GLENN CARSTENS-PETERS ON UNSPLASH-SLATE

タコベルの副店長、ウェンディーズのドライブスルーのオペレーター、高級スーパーマーケットのレジ係......。彼らはさまざまな低賃金の仕事をこなしながら、大学の授業を受けていた。「金曜日になれば給料が入るから、そうしたら正式に代筆をお願いできますか」と聞かれることも少なくなかった。

課題の内容について質問をすると、返事が来るのが翌日や翌々日のこともあった。そんなときは、「返事が遅れてすみません。アルバイトのシフトに2つ連続で入っていたので......」と書かれていることが多かった。

また、依頼人の多くはエリート大学ではなく、コミュニティーカレッジの学生だった。仕事と大学に加えて、子育てをしているシングルペアレントもいた。彼らは学位を取ることで、最低賃金のアルバイトから、キャリアアップを図ろうとしていたのだ。

英語が苦手な留学生も

留学生もいた。「微積分ならアメリカの学生に負けないんだけど、アメリカ文学のクラスは助けが必要で」と言う中国人留学生もいた。たいていの大学にはライティング支援センターがあるが、コロナ禍で多くが一時閉鎖された。

たとえ閉鎖されていなくても、いったん自分の国に帰ってオンラインで授業を受けることにした留学生は、時差がハードルとなってリアルタイムの支援を受けることが難しい。そのせいでひどい成績を取るくらいなら、代筆を頼もうと彼らは考えた。

コロナ禍の隔離生活で、モチベーションが低下した学生も多かったようだ。「キラー・ペーパーズのことは昔から知っていたけれど、自分が使うことになるとは夢にも思わなかった」と言う依頼人は多かった。「でも、気分が塞ぎ込んで、課題だけがどんどんたまっていくから......」

友達や家族を新型コロナで失ったという学生もいた。昨年の秋学期にレポートの代筆を依頼してきた学生は、「この授業の教授は今の人で3人目だ」と言った。その前の2人は、どちらも新型コロナに感染して死亡したのだという。

だが、教授たちは、学生たちの苦しみに無関心であることが多いようだ。新学期に配布されるルーブリック(評価基準)に、「締め切り厳守。お涙頂戴話は聞きたくない」と書いている教授もいた。

もし昨年3月に、「数カ月後には、大学生のゴーストライターとして、これまでの人生で稼いできたよりもはるかに多くの金額を稼いでいるだろう」と予言されていたら、私はからかわれていると思っただろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日米電話会談WSJ報道、政府が改めて一部否定 共同

ビジネス

EXCLUSIVE-中国2企業がベトナム5G契約獲

ワールド

トランプ氏、関税収入で所得税撤廃も

ビジネス

伊銀モンテ・パスキの同業買収、当局が捜査=関係者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中