最新記事

中国

中国選手を絶賛するバッハ会長と五輪を政治利用する菅政権

2021年8月2日(月)08時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

東京五輪開催とコロナ感染拡大は無関係だと菅政権もバッハも主張しているが、「五輪は開催していいのに、なぜ自分たちはここまで自粛しなければならないのか」という庶民の声は大きく、自宅でテレビ観戦しろと言われる中「家族感染」がコロナ感染拡大の一番大きな原因になっているなど、矛盾だらけの政策と現状だ。

五輪が開催されているのだから、「これくらいは許されていいだろう」という気の緩みを招くこともあろうが、緊急事態宣言など出しても、国民は政府など信用していないから「行動変容」には結びついていない。

となると、一桁台でも感染者が出たら都市封鎖をするほどの厳重体制で動いている中国に比べて、このまま行けば日本は爆発的なデルタ株の感染を抑えることが困難になるだろう。

宴(うたげ)が明けて、東京はパンデミックに見舞われ、北京が有観客北京冬季五輪で勝利宣言をすることにつながらないとは限らないのだ。

現時点(7月31日統計)での中国(本土)全体および北京の感染者数と(1日当たりの)新規感染者数を日本全国および東京と比較すると以下のようになる。

210802endo.jpeg
2021年7月31日における感染者数と一日当たりの新規感染者数の比較

この数値を見ただけでも、来るべきシナリオは歴然としているだろう。

中国は総人口14億人の中で、現時点(7月31日で)1025人しか感染者がおらず、北京に至っては猫の子一匹看過せぬ厳しさで厳重警戒している。

しかし、東京の新規感染者数4058人は、日々膨らんでいき、五輪開催中にもデルタ株パンデミックが起きないとも限らない。

その結果、いかなる事態が待ち受けているかと言うと、「民主主義体制」がいいのか、「専制主義的(独裁主義的)体制」がいいのかという、米中両大国を中心とする世界覇権の問題が人類の前に大きく立ちはだかる中で、「専制主義体制」に軍配が上がる危機が横たわっているということなのである。

言論弾圧をする国家の価値観によって支配されたくないと思っているのが民主主義体制の中で生きている人々の共通の思いのはずだ。その思いが踏みにじられるシナリオが待ち構えている方向には動きたくないのもまた、私たちの共通の思いだと信じる。そのためにはいつもグローバルな視点を持っていなければならないのではないかと自らに言い聞かせている次第だ。

(なお、南京の空港において新たに発生したデルタ株感染者に関しては、必要に応じて別途考察することとする)。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、湾岸3カ国と安保協議 無人機防衛技

ビジネス

安川電機、27年2月期純利益は33.4%増の470

ビジネス

日経平均は大幅反発、5万7000円台回復 ファース

ワールド

国防総省の新取材規則、「命令回避の露骨な試み」と米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 7
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 8
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中