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ミャンマー

スー・チー、軍政下の裁判で禁固75年の可能性 新たな容疑で追訴も

2021年8月27日(金)20時09分
大塚智彦
アウン・サン・スー・チー

最長で禁固75年となる恐れが出てきたアウン・サン・スー・チー(写真は2015年11月5日) JORGE SILVA-REUTERS

<国軍司令官率いる軍政によるクーデターから半年。しかし事態は混迷を深めて──>

ミャンマー民主政権の指導者だったアウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相は2月1日に軍によるクーデター発生当日に身柄を拘束され、複数の容疑で裁判が行われている。裁判は軍政に忠実な司法当局の主導で進められているが、最近新たな容疑で訴追されていたことが明らかになった。

スー・チー氏の弁護士によると、すべての裁判で有罪となった場合、判決は合計で禁固75年に達する可能性もあるといい、民主化運動の旗手であると同時に反軍政のシンボルでもあるスー・チー氏の政治生命をなんとしても完全に絶つことに固執する姿勢が浮き彫りとなっている。

これまで3月1日の初公判以来、スー・チー氏に対する公判は原則として毎週月曜日に首都ヤンゴンの特別法廷でウィン・ミン大統領とともに公判が開かれてきた。

しかし、ミャンマー国内でのコロナ感染が拡大したことを受けて軍政の統治機関である「国家統治評議会(SAC)」は7月17〜25日まで全土を休日としてあらゆる社会活動を制限した。

公判もこれにより休廷となり、その後事態の改善が見込めないことなどから休日が8月31日まで延長され、休廷が続いている。

複数の容疑で起訴、公判

これまでに明らかになっているスー・チー氏への容疑は①海外の無線装置を無断で所持していたことによる輸出入法違反②コロナ感染拡大防止のために十分な措置を講じなかったという公衆衛生法違反③許可なく通信機器を所有していたことによる通信法違反④社会不安を煽る声明などを国際社会に発表したことによる刑法違反⑤同じ容疑での扇動罪⑥地方政府当局者から60万ドル相当の金塊を受領したとする汚職法違反、などとなっている。

新容疑で訴追され、9月から公判再開へ

こうしたなか、反軍政メディアはSACが「9月6・7日から公判を再開することに決めた」とスー・チー氏の弁護士キン・マウン・ゾー氏が明らかにしたことを伝えた。同弁護士は休廷中の8月中旬に検察当局が新たな容疑でスー・チー氏とウィン・ミン大統領を起訴したことを明らかにしたという。

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