最新記事

座談会

池内恵、細谷雄一、待鳥聡史が語り合った「山崎正和論」〈1周忌〉

2021年8月19日(木)14時35分
アステイオン編集委員会

asteion-kokusaich20210819-3.jpg

細谷雄一・慶応義塾大学教授 国際政治チャンネル

先生の明るさの根源

■細谷 やはり山崎先生はファナティシズム(狂信)に非常に嫌悪感を持っていらっしゃった。高坂先生はもっとそれが強かったと思うのですが、人間が理性を忘れて暴走したときの怖さ、あの戦争を子供の頃に経験した世代です。

つまり丸山眞男のように論理としてあの戦争を理解しようとするのではなくて、大の大人が狂信的にある方向に突進したときの怖さというものを非常に早熟なあの二人は子供心に感じていた。特に山崎先生は満州国で育っていますからね。

ですから、それに対抗する、ある意味では予防注射として近代主義的な論理、強靱な論理、理性がないといけない。だけどその一方では、大阪に文化をつくるとか、あるいは、サントリー文化財団で地域振興ということを非常に重視するという土着化の視点も持っておられた。

つまり、欧米の「近代主義」をそのままの形で日本に当てはめるのではなくて、日本の歴史、文化のコンテクストの中でどうやって日本の中に埋め込めるかということです。

これはアメリカの社会科学の最先端理論をそのまま日本に当てはめても、我々の生活や社会、そして政治をよくしていくことにどれほど有効かわからないということと同じですね。

今回の待鳥さんの新刊の意図も、ポリティカルサイエンスのスタイルをかなり土台にしながらも、政治学はそこにとどまるものではなくて、その意義を認めながらも、土着化、つまりどうやって日本のコンテクストの中に埋め込んでよりよい政治をつくる上でのヒントを提供できるかということを書かれたのではないでしょうか。

山崎先生が亡くなられる前にまったく意図せずして山崎先生へのオマージュを書き、また文体の影響も受けているのではないですか?

■待鳥 私は文体をまねできるほど熱心な読者では全然なかったのですが、『政治改革再考』は、いわゆるポリティカルサイエンス的であると正面切って言うにはかなり冒険している本です。今のポリティカルサイエンスの中でこういうテーマを扱えるかといえば、論証が厳密でなければいけないなど、近年は基準が非常に厳しい。

もちろん、トップジャーナルの論文もとても大事なことだと思っていますし、それをやるということ自体には価値があります。それによって解明されたり、発展していく領域があるからです。

ただし、みんながそれだけをやればいいかと言われたら、それはちょっと違うと思っています。そのことによってこぼれ落ちていく要素があるからです。政治学が何のためにあるのかと考えたときに、民主主義社会の中に生きている人たちにとって何か腑に落ちるものがないといけないと思っています。

ですから、政治学、ポリティカルサイエンスの純度の高いものはもっと私よりも優秀な人、若い人がやれると思っているので、こういう書き方にしました。

もし、そういう書き方がにじみ出ているのだとしたら、山崎先生をはじめ「そういうふうにやっていいよ」と励ましてくださった方々の影響はあると思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、TSA職員9400人超削減を提案 予算15

ワールド

ゼレンスキー氏、エネインフラ巡る停戦案を堅持 ロシ

ビジネス

米国株式市場=上昇、トランプ氏発言と米・イラン協議

ビジネス

NY外為市場=ドル安定的、円相場160円に接近 中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中