最新記事

座談会

池内恵、細谷雄一、待鳥聡史が語り合った「山崎正和論」〈1周忌〉

2021年8月19日(木)14時35分
アステイオン編集委員会

asteion-kokusaich20210819-4.jpg

待鳥聡史・京都大学教授 国際政治チャンネル

■待鳥 私が最初にお目にかかったのは、サントリー文化財団の研究会「文明論としてのアメリカ研究会」(2006年3月~2008年3月)です。最初の印象は、「わっ、本物がいる!」です。

池内さんと同じで「文学史の教科書に出ている人」なので、まさかそこにいるとは思わないわけですよ。ですから、お目にかかって、まさに「動いてる!」みたいな感じでした。

しかし、実際の山崎先生はものすごく気さくだし、まず威張らない。そして好奇心がとても旺盛。北岡伸一先生や田所昌幸先生など信頼を寄せている人の前では、たとえば日本外交などについて、ものすごく思い切ったことをお尋ねになり、大胆なこともおっしゃる。

でも、それはあえて議論を活性化させることを考えておられたのだと思います。ちょっとご病気という話はあったかもしれませんが、いつもお元気でした。ですから、亡くなられるということ自体が私の中ではまだ十分に受け入れられていないところがあります。

私の最新刊『政治改革再考』(新潮社、2020年)の中でも触れましたが、山崎先生、そして高坂正堯先生は戦後の日本を基本的に肯定的に評価しながら、戦前に回帰することを拒絶し、しかし左派的なやり方で日本をよくしようとすることに対しては懐疑的であるという点で、「戦後日本の非常に真ん中の考え方」を持っておられたと思います。

でも、そういう人たちのグループを適切に表現するラベルがないと感じていました。

「右派」という言葉は強く、すごくネガティブなイメージを持っている人も多いので躊躇があったのですが、あえて「近代主義右派」という言葉を使いました。

いわゆる近代主義、つまり日本の社会におけるものの考え方や人間関係はもっと合理化できるし、もっとさばさばしてていいんだ、都会的でいいということです。

そういう意味では、「都会の人」というのも山崎先生に対して持った強い印象のひとつです。ベタベタとした付き合いはしない。しかし、それは温かさがないとか、無関心ということとは違う。

山崎先生が考えておられて、これまでなされてきたことについては、『政治改革再考』を書く中で何度か考えたことですね。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス石油商社ガンバ―、露ルクオイルの資産買収提案

ワールド

トランプ氏、中央アジア首脳と会談 重要鉱物確保へ連

ビジネス

米失業保険申請、10月最終週は小幅増=ヘイバー・ア

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル発射、EEZ外に落下したとみら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中