今度は米西部でバッタが大発生、繰り返される厄災にどう対処すべきか
Now It’s a Grasshopper Crisis
そこで、私が勤務するワイオミング大学生態系科学・管理学部が推奨しているのが、統合的な駆除戦略だ。これは殺虫剤を散布するエリアと、散布しないエリアを互い違いに設けるというものだ。
バッタは非常に移動性が高いから、広大な地域にくまなく薬剤を散布しなくても、自ら散布エリアに行って毒を食べて死ぬ。バッタの大食いの習性を利用するのだ。こうすれば限定的な量の薬剤で駆除できる。
――バッタは害虫でしかないのか。何かプラスの面はないのか。
もちろん、バッタも野生生物の世界の一員だ。人間が大好きな、美しい声でさえずる鳥の餌にもなる。
ただ、その数は管理する必要がある。(幼虫が成虫になる)1のこの時期に、統合的な駆除戦略によってうまく個体数を管理したほうが、問題が大きくなるまで放置しておくよりもいい。環境にダメージを与えずに、グレートプレーンズの農業とバッタの両方を維持できるのだから。
――バッタの大発生は今後頻発するのか、それとも「当たり年」だけの問題なのか。
バッタの大発生は昔から起こってきた。かつて学位論文を書くときに歴史を調べたのだが、1回の大発生が数年続いたこともあった。最終的には人間が介入しなくても、天候によって死に絶えた。
春に卵からかえったばかりの幼虫は、米粒ほどの大きさで、まだ飛べない。だから、ほかの節足動物や、場合によってはネズミの餌になり、個体数を抑制する助けになる。
――バッタの大発生はどのくらい昔からあったのか。
昔、私の指導教授が、ワイオミング州のウィンドリバー氷河でバッタの研究をしていた。その辺りとモンタナ州には「グラスホッパー氷河」と呼ばれる場所があって、氷河の下でバッタの死骸が見つかることがある。
これはかつてロッキー山脈付近で大発生したバッタで、風に乗って氷河のてっぺんにたどり着いたものの、寒さで飛ぶことができなくなり、氷河に取り込まれて、何百年も後に氷が解けて出てきたらしい。こうした氷河には、数世紀にわたるバッタの大量発生が記録されているわけだ。
――あなたは昆虫研究者として、バッタにどんな思いを抱いているのか。
個体数が限定的な「正常」なバッタなら、大きな魅力を感じる。バッタがアメリカの草原地帯で果たす役割は大きい。バッタが絶滅したら、大型哺乳類が絶滅する場合よりも、草原地帯の生態系に与える影響は大きいと思う。
ただ、1平方ヤード当たりの個体数が50〜100匹のような大群になると、あらゆるものを食べ尽くす非常に不愉快な存在のように感じる。
バッタを好きか嫌いかは決められないな。すごく魅了されるが、害虫として嫌われる理由もよく分かる。
©2021 The Slate Group