今度は米西部でバッタが大発生、繰り返される厄災にどう対処すべきか
Now It’s a Grasshopper Crisis
写真はイメージです ruvanboshoff-iStock
<アメリカでバッタ大発生。ワイオミング大学のバッタ研究者に聞く、生態系を壊さずにバッタを減らす賢い方法>
アメリカ東部では今年5〜6月、17年周期で大量発生するセミが話題をさらった。朝から晩まで大合唱するセミの大群に迷惑顔をする人もいれば、有名シェフがセミ料理のレシピを公開するなど、ちょっとした社会現象になった。
それが一段落したと思ったら、今度は西部でバッタが大量発生しているという。バッタは農作物を食い荒らすという実害を与えるだけに、ユタ州やワイオミング州、モンタナ州など西部の農家はピリピリしている。
実際、その光景はこの世のものとは思えないらしい。オレゴン州の牧場主ロジャー・ニコルソンは、「地上の大災厄」だと英ガーディアン紙に語っている。
だが、殺虫剤を大量散布する駆除方法は、生態系まで破壊する恐れがあるとして、環境活動家から反対の声が上がっている。では、どうすればいいのか。スレート誌のグレース・ウッドラフが、ワイオミング大学の昆虫学者スコット・シェルに話を聞いた。
――どのくらいの数のバッタが発生しているのか。
西部全体がバッタに覆われている印象を与える報道があるが、それは違う。ただ、大発生地域の個体数を合計すると相当な数になるだろう。
懸念の対象となるのは、1平方ヤード(約0.8平方メートル)当たり14匹を超えてからだそれが今年は50〜60匹になっている地域がある。
――農作物を大量に食べられてしまうから、農家にとっては大損害だろう。
こうしたバッタは、農作物の葉を食べるだけではない。特に今年は気温が高くて乾燥しているから、穂先を折って、茎の水分を吸い取ろうとする。実の部分を食べるわけではないが、収穫できないものにしてしまうから、農家にとっては大損害だ。
しかもバッタが草を食べるスピードは、動物よりもずっと速い。体の大きさに対する消費量で見ると、家畜などよりもはるかに大量に食べる。
幼虫のときは、1日に自分の体重よりも重い量の草を食べることもある。まだ飛べないから、周辺を動き回って作物の葉先を食べ散らかす。
芽が出たばかりの農作物は、まだ口が小さい幼虫にとってぴったりのごちそうで、育つそばから食べ尽くしてしまう。
――なぜ今年の大発生はとりわけ懸念されるのか。
干ばつとバッタの大量発生の組み合わせがまずい。アメリカ西部は今年、高温と激しい干ばつに見舞われている。
このためモンタナ州は、バッタを幼虫のうちに駆除しようと、殺虫剤の空中散布を開始した。だが、これには環境活動家の間から反対の声が上がっている。バッタ以外の多くの昆虫も駆除して、生態系のバランスを悪化させるというのだ。