最新記事

環境

今度は米西部でバッタが大発生、繰り返される厄災にどう対処すべきか

Now It’s a Grasshopper Crisis

2021年7月30日(金)19時45分
グレース・ウッドラフ
バッタの大量発生(イメージ画像)

写真はイメージです ruvanboshoff-iStock

<アメリカでバッタ大発生。ワイオミング大学のバッタ研究者に聞く、生態系を壊さずにバッタを減らす賢い方法>

アメリカ東部では今年5〜6月、17年周期で大量発生するセミが話題をさらった。朝から晩まで大合唱するセミの大群に迷惑顔をする人もいれば、有名シェフがセミ料理のレシピを公開するなど、ちょっとした社会現象になった。

それが一段落したと思ったら、今度は西部でバッタが大量発生しているという。バッタは農作物を食い荒らすという実害を与えるだけに、ユタ州やワイオミング州、モンタナ州など西部の農家はピリピリしている。

実際、その光景はこの世のものとは思えないらしい。オレゴン州の牧場主ロジャー・ニコルソンは、「地上の大災厄」だと英ガーディアン紙に語っている。

だが、殺虫剤を大量散布する駆除方法は、生態系まで破壊する恐れがあるとして、環境活動家から反対の声が上がっている。では、どうすればいいのか。スレート誌のグレース・ウッドラフが、ワイオミング大学の昆虫学者スコット・シェルに話を聞いた。

――どのくらいの数のバッタが発生しているのか。

西部全体がバッタに覆われている印象を与える報道があるが、それは違う。ただ、大発生地域の個体数を合計すると相当な数になるだろう。

懸念の対象となるのは、1平方ヤード(約0.8平方メートル)当たり14匹を超えてからだそれが今年は50〜60匹になっている地域がある。

――農作物を大量に食べられてしまうから、農家にとっては大損害だろう。

こうしたバッタは、農作物の葉を食べるだけではない。特に今年は気温が高くて乾燥しているから、穂先を折って、茎の水分を吸い取ろうとする。実の部分を食べるわけではないが、収穫できないものにしてしまうから、農家にとっては大損害だ。

しかもバッタが草を食べるスピードは、動物よりもずっと速い。体の大きさに対する消費量で見ると、家畜などよりもはるかに大量に食べる。

幼虫のときは、1日に自分の体重よりも重い量の草を食べることもある。まだ飛べないから、周辺を動き回って作物の葉先を食べ散らかす。

芽が出たばかりの農作物は、まだ口が小さい幼虫にとってぴったりのごちそうで、育つそばから食べ尽くしてしまう。

――なぜ今年の大発生はとりわけ懸念されるのか。

干ばつとバッタの大量発生の組み合わせがまずい。アメリカ西部は今年、高温と激しい干ばつに見舞われている。

このためモンタナ州は、バッタを幼虫のうちに駆除しようと、殺虫剤の空中散布を開始した。だが、これには環境活動家の間から反対の声が上がっている。バッタ以外の多くの昆虫も駆除して、生態系のバランスを悪化させるというのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中