最新記事

ブロックチェーン

周到に準備されてきた中国ブロックチェーン覇権、来年ついに実を結ぶ?

China’s Big Blockchain Bet

2021年7月29日(木)17時18分
アレクサンダー・ザイチック、ケリー・リジーニー・キム、アンジー・ラウ

この間、中国のハイテク分野の取り組みには失敗も成功もあった。高性能な半導体の生産では、いまだ自給体制も確立できていない。5Gの無線通信では先行したが、人工知能(AI)のような戦略的価値が大きい分野では米欧諸国に後れを取っている。

だがブロックチェーンに関しては、重要な技術でリードしているようだ。19年には習近平(シー・チンピン)国家主席が、ブロックチェーンは「中国のデジタル変革の次の波を導く」だろうと豪語した。

そして何千もの企業が消費者金融から国際輸送、サプライチェーンに至るまで、あらゆる分野でブロックチェーン事業を開始したと報じられている。

拡大の勢いは止まらないとウィットコップは言う。「中国の独走態勢だ。他の国をはるかに引き離している」

最近のマッキンゼーの報告によると、これらのプロジェクトは既に世界で最も高度なレベルにある中国のデジタル・エコシステムにさらなる変化をもたらしている。中国には9億9000万のネットユーザーと世界の有望スタートアップ企業の4分の1以上が存在する。

10年後はすべての取引がブロックチェーンで

その1つ、杭州に拠点を置く金融サービス大手アント・グループは輸送、保険請求処理、寄付など50以上の分野で、ブロックチェーン・ベースの分散型アプリを提供している。

中国最大のネット検索エンジン百度(バイドゥ)は、国内の「インターネット法廷」で3500万件の電子証拠を扱うアプリなど、20の分散型アプリを運営している。中国平安保険も、公共事業への融資に分散型アプリを利用している。

ブロックチェーンの最前線で市場開拓に励むのは民間企業だけではない。中国工商銀行のある部門は、個人商店や企業向けの分散型アプリを開発した。

「ブロックチェーンは、技術と社会の機能を向上させる」と言うのは、紅枣科技(レッド・デート・テクノロジー)の何亦凡(ホー・イーファン)CEOだ。

「世界中の全てのITシステムが1つの部屋に集まったかのように情報伝達できる」。10年後にはあらゆる取引がブロックチェーン・ベースになると強気の予測もしている。

ブロックチェーンの現状は93年頃のインターネットに似ていると何は言う。当時、ほとんどの企業にはインターネット(そもそも米国防総省が開発し、民生転用を許したプロジェクトだ)の参入コストを負担する余裕がなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡りトランプ氏との会談求める

ワールド

タイ・カンボジア両軍、停戦へ向け協議開始 27日に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 6
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 7
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中