最新記事

人権問題

福山雅治ほどの温厚な人を怒らせた「3つのスイッチ」とは

2021年7月30日(金)18時02分
木村 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

これはビジネスパーソンにとっても決して他人事ではなく、温厚な人を怒らせる側にならないような配慮が必要。たとえば、「温厚な人を軽くからかったり、ツッコミを入れたりなどのイジるようなトークをしている同じテンションで、大切にしている人やモノをイジってしまう」というケースをよく見かけます。

一見、温厚そうな人が、「自分のことはいいけど家族はイジるな」「僕は軽く扱われてもいいけど、この商品は軽く扱わないでほしい」などと突然、怒り出すこともあるので気をつけましょう。

「変わろうとしない」ことの罪深さ

次に"過去"にかかわる怒りのスイッチは、「少しも変わろうとしない」という相手の姿勢。

福山さんは、「『どんな顔をしているんだろう』『どんな子どもなんだろう』と興味がある人の興味を否定はしない」とコメントしていました。「世間の人々が芸能人の家族に興味を持つのは理解できるし、それは昔も今も変わらないこと」として受け止めているのです。

一方、「昔から変わらないこと」として怒りがにじみ出ていたのは週刊誌の取材スタンス。福山さんの「今までデビューして30年間、いろんな掲載のされ方、こちらが取材をきちんと受けていない状態で掲載されるというのを、週刊誌や憶測記事などさまざまな媒体でされてきた30年間でした」というコメントに積年の怒りが表れていました。

その30年の間に、個人や多様性の尊重、コンプライアンスの順守、ネットの普及と進化など、「世間は大きく変わっているのに、芸能人への取材スタンスだけは昔から変わっていない」と言いたいのではないでしょうか。

そもそも、今の人々は以前ほど「芸能人の家族を見たいとは思わない」「かつてほど芸能人を特別視しない」ようになりました。なかには「『家族の写真を見てしまった』という気まずさを感じる」という人もいるのに、多くの週刊誌はそんな人々の変化に目を向けようとせず、紙媒体が主流だったころの取材スタンスを変えようとしないのです。福山さんは子どもの写真が撮られたことと同じくらい、昭和の時代から変わらない週刊誌の取材スタンスに怒っていたのでしょう。

ビジネスシーンにも、時代や人々の変化に合わせて「変わらない」「変わろうとしない」という人や組織は少なくありません。たとえば、相手がほとんど怒っていないように見えても、「変わらない」と感じられている状態が長くなるほど、何らかのタイミングで爆発されてしまう危険性が上がっていくものです。

福山さんは、「『違う』と思っていることや、『嫌だ』と思っていることはきちんと発言し、発信していくべきではないかと思っています」とも語っていました。このフレーズは、「これからは言っていきますよ」という過去との決別を表していたのです。

未来に向けた「怒りの予告」だった

3つ目の"未来" にかかわる怒りのスイッチは、ネット社会のリスク。

福山さんは、「子どもが幼稚園に通っているわけですよね。毎日通るその場所で全然知らない人が写真を撮っている。しかも撮った方、写真を掲載する媒体、編集の方、さまざまな方が僕の子どもの顔を知っている。かつデジタルの時代なんで、データを持っているわけですよね。そして、いつでもモザイクを外せるような状態で共有しているわけですよね。これって、とても怖いことだと思ったんです」とコメントしていました。

写真が掲載されたときだけでなく、撮影された瞬間から永遠に続いていくリスクであり、各編集部や個人がデータを保有することで、恐喝や誘拐などの事件につながらないとも限りません。また、「外部に流出して世界中の人々にさらされてしまう」というリスクもあります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中