福山雅治ほどの温厚な人を怒らせた「3つのスイッチ」とは
さらに言えば、撮られていることを知った子どもがメンタルの不調をきたすこともありうるでしょう。記者やカメラマンから一方的に顔と名前を知られ、日常の何気ない姿を監視され続けていることは大きなストレスであり、子どもが成長するにつれてそのリスクは高まっていきます。「今やネット社会のリスクは、温厚な人を怒らせるほど大きなものになっている」ということでしょう。
福山さんは、「『これから何年先も我慢して過ごしていかなければいけないのかな』と思うと、『それは違うな』と思ったんです」とも語っていました。今回の発言は、「今、怒っている」というより、未来に対する「怒りの予告」という意味合いが強いのでしょう。
ここまであげてきたことを要約すると、"現在"は直情的な怒り、"過去"は永続的な怒り、"未来"は抑止的な怒りが込められているのです。
福山さんはコメントの締めくくりに、「『ちょっともうこれ、一線どころか、ずいぶん超えたところまで来ちゃったな』と思っていて。タブー視したり、暗黙の了解で黙認しているわけでもないし、『スルーすることも違うのかな』と思っているので。『2021年の現在から未来において、変わっていく時期なのかな』と思っています」と語っていました。
子どもの撮影については、何かとメディアが主張する報道の自由や表現の自由は該当せず、むしろ肖像権の侵害。また、福山さんのコメントに賛同する人がほとんどであることから、今後はこういう写真を掲載した媒体を買わなくなる人が増えていくのではないでしょうか。
田村淳も賀来賢人も怒っていた
そもそもスキャンダルでも事件でもない普通の写真を撮り、掲載することは、「取材力のなさを自ら証明する」という意味でメディアにとって恥ずべき行為。需要もそれほどないだけにすぐにやめられるはずです。
その他にも、「取材マナーは記者個人の判断に任せる」「とりあえず撮りに行かせる」「夜討ち朝駆けは当然」「保育園や小学校などにまぎれ込ませる」などの旧態依然とした取材スタンスの編集部は少なくありません。デジタルデータの扱い以前に改善しなければいけない点が多いのです。
今回の件は福山さんだけの問題ではなく、田村淳さんは昨年9月に「家族と居るときに写真や動画を撮るのは本当に勘弁してもらいたい」。賀来賢人さんは今年5月に「盗撮するのは100万歩譲って許します。しかし、もし次、私の子どもを盗撮した記事を例えモザイクをつけたとしても、載せた場合、私は本当に怒ります」とコメントしていました。
週刊誌の多くは大手出版社が発行していることもあってコンプライアンスが問われていますし、もはや「芸能人なら当たり前」「こちらも商売なので」という言い分は通用しないでしょう。
木村 隆志(きむら たかし)
コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。