最新記事

人権問題

福山雅治ほどの温厚な人を怒らせた「3つのスイッチ」とは

2021年7月30日(金)18時02分
木村 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

さらに言えば、撮られていることを知った子どもがメンタルの不調をきたすこともありうるでしょう。記者やカメラマンから一方的に顔と名前を知られ、日常の何気ない姿を監視され続けていることは大きなストレスであり、子どもが成長するにつれてそのリスクは高まっていきます。「今やネット社会のリスクは、温厚な人を怒らせるほど大きなものになっている」ということでしょう。

福山さんは、「『これから何年先も我慢して過ごしていかなければいけないのかな』と思うと、『それは違うな』と思ったんです」とも語っていました。今回の発言は、「今、怒っている」というより、未来に対する「怒りの予告」という意味合いが強いのでしょう。

ここまであげてきたことを要約すると、"現在"は直情的な怒り、"過去"は永続的な怒り、"未来"は抑止的な怒りが込められているのです。

福山さんはコメントの締めくくりに、「『ちょっともうこれ、一線どころか、ずいぶん超えたところまで来ちゃったな』と思っていて。タブー視したり、暗黙の了解で黙認しているわけでもないし、『スルーすることも違うのかな』と思っているので。『2021年の現在から未来において、変わっていく時期なのかな』と思っています」と語っていました。

子どもの撮影については、何かとメディアが主張する報道の自由や表現の自由は該当せず、むしろ肖像権の侵害。また、福山さんのコメントに賛同する人がほとんどであることから、今後はこういう写真を掲載した媒体を買わなくなる人が増えていくのではないでしょうか。

田村淳も賀来賢人も怒っていた

そもそもスキャンダルでも事件でもない普通の写真を撮り、掲載することは、「取材力のなさを自ら証明する」という意味でメディアにとって恥ずべき行為。需要もそれほどないだけにすぐにやめられるはずです。

その他にも、「取材マナーは記者個人の判断に任せる」「とりあえず撮りに行かせる」「夜討ち朝駆けは当然」「保育園や小学校などにまぎれ込ませる」などの旧態依然とした取材スタンスの編集部は少なくありません。デジタルデータの扱い以前に改善しなければいけない点が多いのです。

今回の件は福山さんだけの問題ではなく、田村淳さんは昨年9月に「家族と居るときに写真や動画を撮るのは本当に勘弁してもらいたい」。賀来賢人さんは今年5月に「盗撮するのは100万歩譲って許します。しかし、もし次、私の子どもを盗撮した記事を例えモザイクをつけたとしても、載せた場合、私は本当に怒ります」とコメントしていました。

週刊誌の多くは大手出版社が発行していることもあってコンプライアンスが問われていますし、もはや「芸能人なら当たり前」「こちらも商売なので」という言い分は通用しないでしょう。

木村 隆志(きむら たかし)

コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ドイツ金融監督庁、JPモルガンに過去最大の罰金 5

ビジネス

英建設業PMI、10月は44.1 5年超ぶり低水準

ビジネス

ECBの金利水準に満足、インフレ目標下回っても一時
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 8
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中