医療崩壊寸前のインドネシアに残された在留邦人の不安はピークに
インドネシア・ジャカルタで、酸素吸入用のボンベに酸素を充填してもらう人びと REUTERS/Ajeng Dinar Ulfiana
<医療体制のぜい弱さやワクチン接種が見通せず帰国もままならない異国にいる邦人の不安はいかばかりか──>
東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国の中でコロナ感染者数・死者数が最悪を記録し続けている大国インドネシアが医療崩壊の瀬戸際に立たされている。
7月12日には一日の感染者数が4万人を超えて過去最大を記録、医療関係者や県知事の感染死亡も伝えられている。
ジョコ・ウィドド政権は首都ジャカルタなどにこれまで以上に厳しい制限を課す「緊急公衆活動制限(PPKM Darurat)」を7月3日から施行しているが、その効果は上がっていない。
中国製ワクチン接種を受けた医療関係者の感染、感染死が相次いで報告されるなどインドネシアの医療は崩壊の瀬戸際に追い込まれているといえる。
こうしたなか、インドネシア人と同様に感染者、死者が増えている在留日本人の間からはワクチン接種への対応、病院への入院支援などで日本大使館への不満も広がっているという。
危機感高まる在留日本人から不満の声
インドネシア社会の不十分な感染拡大防止策や中国製ワクチンの有効性、安全性に対する不安、さらに病院がどこも満床に近い状態のため、発熱などによる診察や症状悪化での入院が困難な現状に、在留日本人たちは「一体どうすればいいのか」という切実な問題に直面している。
日本外務省は在外日本人に対して8月1日以降、成田空港などでワクチン接種を進める方針を明らかにしている。
しかしこの方針に対して「インドネシアにいる日本人の実情を無視している」との声が出ている。
何しろ、一時帰国しようにも日本に向かうインドネシア発の航空便が連日満席状態でチケットが確保できない状況が続いているというのだ。航空各社は感染拡大防止策として座席の間隔をあけてチケットを販売しており、これも「帰国便確保困難」に影響しているという。
さらに仕事や家庭の諸事情から一時帰国ができない在留日本人も多数おり、そうしたことを背景に「日本大使館には医官もいるということだし、大使館内で日本から運んだワクチン接種ができないのだろうか」「日本から医師や看護師、自衛隊の医官などを緊急にジャカルタに派遣して在留日本人向けのワクチン接種ができないものか」「インドネシア政府にワクチンを大量に供与しているが、在留日本人のためにワクチンをジャカルタに運ぶことはできないのか」「チャーター便で帰国希望の在留日本人を運ぶことを検討してみてはどうか」などの不満や注文などの声が出ている。
インドネシアではこれまでに在留日本人の感染者は300人を超え、感染死者は7月12日までに14人を確認している。
しかしこの数字には在留届を大使館に提出しておらず、インドネシア人と結婚してイスラム教徒などに改宗して地域社会に溶け込んでいるが日本国籍は有しているというような「定住日本人」の感染者、感染死者の数字は「把握が難しい面がある」(大使館関係者)として含まれていない。