最新記事

仮想通貨

本気で国の未来をビットコインに賭けたウクライナ...その内情と勝算

KYIV’S BET ON BITCOIN

2021年6月18日(金)18時25分
エリザベス・ブラウ
ウクライナのビットコイン関連企業

今はウクライナでもビットコインを扱う会社や使える店が増えている PAVLO GONCHARーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES

<「仮想通貨大国」を目指し経済改革を狙うウクライナだが、犯罪への悪用や環境負荷の高さなど問題は山積している>

それなりの経済規模はあるけれど産業の主力は農業と鉄鋼業で、国外の投資家には見向きもされない。そんな国が、外資を呼び込むにはどうしたらいいか。

ウクライナの答えはビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)だ。ロシアからクリミア半島を取り戻すことは無理でも、仮想通貨に群がる金融業者は呼び込めるかもしれない。だが、そこにはリスクが潜む。

ウクライナの南東部、ロシアからも近いザポリージャ原子力発電所のすぐ隣で、ビットコインのマイニング(売買取引を記録し、その報酬として新たに発行される仮想通貨を得る作業)のための施設が建設されている。ザポリージャ原発の規模は欧州最大だ。

そこを運営する国営企業エネルゴアトムと民間企業の「H2」が約7億ドルの資金を投じて、同原発の電力を無尽蔵に消費する施設を造っているのだ。マイニングには膨大な電力が必要なので、発電所にとっては願ってもない「お得意様」となる。

西部のリウネ原発付近にも、マイニング施設の建設計画がある。こちらはエネルゴアトムに加え、オランダの企業などが出資している。

「仮想通貨の世界的なハブになれる」

いささかうさんくさい話だが、ウクライナ政府は本気で仮想通貨に賭けている。この国には既に「デジタル転換省」というのがあり、いま議会では仮想通貨の新法案が審議中で、関連企業に対する税制上の優遇策も検討されている。

「わが国には才能ある技術者と、ブロックチェーンを生成する企業のコミュニティーがある」と豪語するのは同省副大臣のアレクス・ボルニャコフだ。「彼らは他国の企業よりも早く仮想通貨の勢いに気付き、ビジネスにつなげている」

公式統計によれば、この国には今でも100前後の仮想通貨関連企業がある。サイバーセキュリティー企業のハッケンや投資団体のまとめた報告によれば、2019年7月からの1年間にウクライナから送金された仮想通貨の価値は米ドル換算で82億ドル、入金額は80億ドル相当だった。

ボルニャコフは言う。「これで仮想通貨法が成立すれば、ウクライナは仮想通貨の世界的なハブになれるだろう。企業は『仮想通貨フレンドリー』な国を目指すはずだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、米利下げ観測で5週ぶり安

ワールド

NYタイムズ、報道規制巡り国防総省を提訴 「言論の

ビジネス

ネトフリ、米ワーナー買収入札で最高額提示か 85%

ワールド

コンゴ・ルワンダ、米仲介の和平協定に調印 鉱物巡る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中