最新記事

インド

SNSで売られるインドのコロナ孤児たち 児童売買・性的虐待が流行か

2021年5月26日(水)18時00分
青葉やまと

コロナ以降は児童搾取の深刻化に歯止めがかからない YouTube-DW

<コロナで親を亡くした孤児がインドで多数発生し、SNSで違法な児童取引が横行している>

新型コロナウイルスが猛威を振るうインドでは、日々4000人前後の人々が命を落としている。このなかには子を持つ親も含まれており、コロナで身寄りをなくした孤児が日々多数発生している状態だ。

この混乱に乗じ、TwitterやWhatsAppなどで違法な児童取引を持ちかける例が相次いでいる。WhatsApp上で頻繁に送信されているあるメッセージは、「養子縁組を待っている女の子が2人いて、一人は生後3日、もう一人は生後6ヶ月です。両親はCOVID-19で息を引き取りました」「お願いです、この子たちが新しい人生を始められるよう助けてください」と綴っている。

第三者が少女たちの身を案じた善意のメッセージのようにも見えるが、2015年に制定された少年司法法は、指定の児童保護機関などを通さない児童取引を禁止している。前述の投稿は少なく見積もってもこの点で違法だ。違反すれば最大5年の懲役、または10万ルピー(約15万円)までの罰金が科される。

さらに、複数の現地メディアの報道によると、メッセージの送信主は里親探しに偽装し、実際には児童本人の同意なく身柄を売り渡そうとしているものと見られる。インド政府が運用するフェイクニュース対策のツイッターアカウント「PIBファクトチェック」は、当該のツイートをフェイクだと断定し、取引に応じないよう警告している。

売買業者は引き取り手の身元すら確認していない

地元当局は、善意の文章に偽装した人身売買の横行に手を焼いている。インドのヒンドゥスタン・タイムズ紙が報じるところでは、ヘルプラインの担当者が他の類似のSNSメッセージに書かれていた連絡先に接触を試みたところ、電話口に立った男性は引き取り手の身元も確認せずに取引を承諾したという。

ヒンドゥー紙の報道によると、デリーの児童権利保護委員会のアヌラグ・クンドゥ委員長はこのような投稿が多発していることから、人身売買の流行に危機感を募らせている。クンドゥ委員長はデリー警察長官に対し、個別の事例について調査を行うよう要請した。

SNS上で飛び交うメッセージのなかには、なかには善意のものも存在するのだろう。しかし、おおかたは反社会勢力による児童取引との見方が濃厚だ。仮に利益目的でないのであれば、法律で定められた児童保護団体など、4つの機関のいずれかに通報すれば事足りる。

ヒンドゥスタン・タイムズ紙は、過去にはネパール地震の際、ギャングによる人身売買が活発化したと指摘している。今回のコロナ禍においても、こうした勢力の暗躍が懸念されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、来年は積極的なマクロ政策推進 習氏表明 25

ワールド

フィンランド、海底ケーブル損傷の疑いで貨物船拿捕 

ビジネス

トランプ・メディア、株主にデジタルトークン配布へ 

ワールド

台湾、警戒態勢維持 中国は演習終了 習氏「台湾統一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 10
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中