最新記事

中国

自己責任同意書:五輪選手は手術台への階段を上るのか

2021年5月31日(月)17時26分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

つまり究極的には、「コロナに罹って死のうと、熱中症で死のうと、それは自分の責任であって、IOCなどの主催者側には責任はありません。すべて自己責任なのです」と誓わせていることになる。

これは手術台に上がるまでに医者が患者や親族にサインをさせる「生死同意書」と同じで「よくも手術によって私の大事な人を殺したなとは絶対に言いませんということを誓ってもらわないと手術はしません」という「生死同意書」と同じ事なのである。

IOCのバッハ会長は、これまでも同様の同意書は要求してきたので、何ら特殊なことではないと言っているようだが、しかし米「Yahoo!Sports」は2016年の時の同意書のコピーも入手しており、以下のように書いている。

―― The analogous form in 2016, also obtained by Yahoo Sports, did not mention disease or heat.

(Yahoo!Sportsが入手した2016年の類似の用紙には、病気や暑さについての記載はない。)

中国の報道は?

中国の知識層が多く読む「観察者」には「国際オリンピック委員会(IOC)が選手に同意書署名を要求:コロナに感染しても自己責任」というタイトルの報道があり、そこには「Yahoo!Sports」が入手したというコピーが貼り付けられている。

念のため以下に示す。

Yahoo!Sportsが入手したコピーを中国のウェブサイト「観察者」が報道

この青色で染めた個所が冒頭で書いた英文に相当した部分である。「観察者」の記事の冒頭には以下のように書いてある。

――日本のコロナの形勢が好転を見せていない中、「絶対に東京五輪を中止しない」と言い張っているIOCは最近、大会参加選手に「コロナがもたらした健康被害に関しては自己責任において、『私自身が責任を負います』」という「同意書」にサインすることを要求している。IOCの関係者は、これは大型スポーツ競技では普通に要求される「標準的なやり方」だ、と言っている。(引用ここまで)

ウェブサイト「観察者」はさらに、日本のメディアが「少なくとも過去6回の夏季および冬季五輪では、ジカ熱が流行した2016年においてさえ、感染や死亡という文字が同意書に出てきたことはない」と報道していると言及している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中