最新記事

子育て

乳幼児の発育に「スマホ=害」ではない 有意義な活用法を知ろう

Advanced Screening

2021年5月22日(土)13時21分
スマホ画面をのぞき込む子供(イメージ)

最新機器があふれる現代では画面を見せないのではなくどう使わせるかが重要に TIPLYASHINA EVGENIYA/SHUTTERSTOCK

<今やテレビやスマホは子育てと切り離せない存在。悪影響を避けつつ、交流や学習に生かす利用法とは>

育児支援の米NPOゼロ・トゥ・スリーが18年10月、「スクリーン・センス」という手引の最新版を公表した。乳幼児の発達において、画面型メディアが果たす役割や影響を調査し、3歳以下の子供たちの電子画面との付き合い方を指南したものだ。

育児の専門家たちは長年、赤ちゃんが電子画面を見たり、電子機器を使ったりすることに強く反対してきた。しかし21世紀の社会では、親がそれを守ることが次第に難しくなっている。

「タブレットは今や、子供を取り巻く環境の一部になっている」と、バンダービルト大学のジョージーン・トロセス准教授(心理学)は言う。「現実世界でさまざまな人や物と接しているのなら、限られた時間を画面の前で過ごしても発達に害が及ぶとは考えにくい」

デジタル端末やタッチパネル、インタラクティブなビデオゲームがあふれる世界において、画面の視聴を絶対に認めないことは時代遅れなだけではない。子供の未来にテクノロジーが果たす重要な役割を無視している。大切なのは節度を保つことだ。

テレビやパソコン、スマートフォンなど端末の画面を見る時間(スクリーンタイム)とそれ以外の時間のバランスを取るようにしよう。画面を通して学ぶ知識が、現実世界での交流の代わりになるとは期待しないことだ。

テレビがつけっ放しなどは望ましくない

「画面型メディアの中には、発達途上の脳にとって有益なものもある。双方向性や相互交流は、子供の学びを助ける重要な鍵になる。それによって、情報が『自分に向けられた』ものだと認識できるからだ」と、トロセスは説明する。

「例えばビデオチャットなどで画面に映った人が実際に話し掛けてきたり、何らかの反応を示したりすると、子供はその人の言っていることを現実世界に結び付けやすい」

こうした画面型メディアについての新しい見解は、2歳未満の乳幼児にはテレビやゲームなどの画面を見せないほうがいいというアメリカ小児科学会(AAP)の長年の指針とは異なるものだ。AAPはこれまで、スクリーンタイムは現実世界における親子の交流を減らすという前提に立ってきた。そこでは、親子が一緒に機器を見て楽しむケースが想定されていない。

常にテレビがつけっ放しになっているのが望ましくないことは、研究が示唆している。両親と赤ちゃんの気を散らし、互いにもっと有意義な方法で触れ合うことを妨げるからだ。

しかし現実世界での交流に加えて、受け身ではない能動的な画面型メディアの利用であれば、情報と現実の状況をどう関連付けたらいいかを赤ちゃんに教えることができる──専門家たちはそう考え始めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中