最新記事

インド

インドのコロナ取材、欧米メディアの非常識...病室に押しかけ火葬を蹂躙

The Lurid Orientalism

2021年5月13日(木)20時02分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

欧米メディアが外国の災害を報じるに当たって無神経ぶりを発揮するのは、これが初めてではない。2011年の東日本大震災のときは、震災の犠牲者は二の次で、福島第一原発事故の放射能漏れというセンセーショナルなニュースばかりが報じられた。

しかもその内容は、文化的・人種的ステレオタイプに満ちていた。被害拡大を食い止めるために原発内にとどまった作業員たちは、「原発のサムライ」とあだ名され、「自殺的なミッションを遂行する原発のニンジャ」と報じられたのだ。

実際には、原発事故そのものによる直接的な死者は1人も出なかった。それなのに欧米メディアは、フクシマをチェルノブイリ原発事故になぞらえ、ヒステリックな反応をあおり続けた。その結果、外国の貨物船は、福島からどんなに離れていても日本への寄港を避け、一部の国は東京などから自国民を退避させた。

欧米メディアは、アフリカに対しても同じようなアプローチを取ってきた。いつまでたっても未開人だらけで、紛争や災害が永遠に繰り返され、ハッピーな顔をした人間がいない大陸、という扱いだ。

米兵の遺体写真はめったに報じられない

14~16年に西アフリカでエボラ出血熱が流行したときもそうだった。2年間の死者の合計は1万1325人。アメリカではつい3カ月前、コロナ禍により、わずか2日間でほぼ同数の人が命を落としていた。それなのに当時の欧米メディアは、遺体袋と現地の伝統儀式をドラマチックに報じ続けた。

15年には、こうした悲惨な場面ばかりを追い掛けたフリーランスの写真家が、ピュリツァー賞を受賞した。だが、昨年のピュリツァー賞では、受賞作も候補作も、今世紀最大のグローバルヘルス危機であるコロナ禍をテーマにしたものは一つもなかった。

欧米メディアが、人間の苦しみや悲しみ、絶望や愚かさをストレートに報道するのは、それが遠くで起きている場合に限られるようだ。米兵の遺体写真はめったに報じられないが、アフガニスタン人やイラク人の死を捉えた写真は、メディアにあふれている。

もちろん欧米メディアが全て同じわけではない(これまで言ってきたことは、米英系メディアの態度と言ったほうが正確だろう)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英南東部の髄膜炎集団感染で2人死亡 大学生らにワク

ワールド

NZ第4四半期GDPは前期比0.2%増、予想下回る

ビジネス

中東紛争、深刻な国際的ショックに発展も=豪中銀金融

ビジネス

3月ロイター企業調査:7割が前年以上の賃上げ検討、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中