最新記事

在米アジア人

米アジア系収入、白人平均を上回る トップはインド系、日系3位

2021年5月17日(月)17時10分
青葉やまと
サンダー・ピチャイ

Google親会社Alphabetの最高経営責任者サンダー・ピチャイなどIT企業はインド出身者が増えている REUTERS/Denis Balibouse

<ここ数年アメリカでは、アジア系の収入が平均的な白人を上回る状況が続く。一方、在米アジア人のあいだで収入格差は拡大し、日系に対するインド系のリードが広がっている>

パンデミック以降のアメリカでは、その当初の震源地となったアジア系への一部で悪化している。しかし、コロナ以後を別にすれば、アジア系はスマートで裕福だという印象が一般に強いようだ。

このイメージを取り入れた作品の一例を挙げれば、2018年ワーナー制作の映画『クレイジー・リッチ!(原題:クレイジー・リッチ・アジアンズ)』が有名だ。『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』のジョン・M・チュウ監督による作品で、91%の批評家から好意的な評価が寄せられた。ニューヨークで働くアジア女性が、同じくアジア系の富豪の恋人と華やかなシンガポール旅行を繰り広げるストーリーだ。

もちろんこれは映画のなかの物語だが、裕福なイメージは決して誤りではないようだ。米国勢調査局のデータによると、遅くとも2010年の時点ですでに白人世帯より収入が大きくなっている。アジア系のみで構成される世帯の一人あたりの年収は6万7022ドルとなり、ヒスパニック系・ラテン系を除く白人世帯を1万3000ドル近く上回った。最新の2019年分のデータでは差がさらに拡大している。

順当な成長の秘密は、教育を重視する姿勢にあるようだ。米ブラウン大学のナサニエル・ヒルガー経済学助教授(2016年当時)はワシントン・ポスト紙に対し、「よく聞かれる説は、アジア系アメリカ人は非常に不利な状態でアメリカにやって来て、そこから子供たちの教育に並ならぬ投資をしたことで裕福になったというものです」と語っている。

ただし、ヒルガー助教授自身はこの説に懐疑的な立場を示しているようだ。アジア人への偏見がなくなったことでより良い職業に就けるようになったのでは、と独自の推察を添えている。

同じアジア系でも差は激しい

いずれにせよ平均収入は伸びているわけだが、実は一口にアジア系と言っても、すべての民族が一様に向上しているわけではない。それどころかアジア系は、アメリカに住むさまざまな人種のなかでも最も格差が大きい部類に入る。

フォーブス誌は、ニュースや調査結果からはアジア系が裕福な印象を受けるが、実態はこれとは異なると述べている。ここ30年ほどでアジア系アメリカ人のあいだで賃金格差が拡大しており、多くの人々が低賃金の仕事を強いられているという。

高齢になると差は顕著で、貧困状態にある白人は8.7%に対し、アジア系では14.7%にも上る。集団全体としてのデータには表れないが、アジア系のなかでの格差が大きいことから、経済的に余裕のない人は極めて追い詰められているようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中