コロナ封じ込め「デジタル監視」を台湾人が受け入れる理由
TAIWAN’S WIN EXPLAINED
これほどの透明性はリベラルな民主主義国でも珍しい
台湾の民主主義はまだ若い(始まりは1996年の総統選挙だ)。だから蔡は「ラフコンセンサス(おおまかな合意形成)」、つまり「対立する2つの価値観の衝突や対決ではなく、多くの多様な価値観の間で交わされる会話としての民主主義」の実現を強調している。
この政治手法は住民の政策参加を促す。新型コロナ対応でもこれが効いた。例えば、マスクの市中在庫をリアルタイムで確認できる「マスクマップ」のアプリ開発にはクラウドソーシングを利用した。
みんなで手掛けたアプリだから、みんなが信用し、結果としてパニック買いによる品薄状態を回避できた。
こうした施策の先頭に立っているのが、ヒマワリ運動にも参加したオードリー・タン(唐鳳、タン・フォン)。
2016年から台湾初のデジタル担当相を務めるタンの関心は、インターネットを機能的な民主主義の一部にすること。それが市民の政治参加を促し、真の対話を育み、合意形成を容易にすると確信している。
タンは「徹底的な透明性」と「デジタル・オープンネス」の原則に基づいて活動している。だから有権者は大臣の言動を全て把握できる。タンは毎週、決まった日に一般住民と会い、どのミーティングの記録もきちんと公開している。
ここまで徹底した透明性は、最もリベラルな代表制民主主義の諸国においても珍しい。
独裁的な政府がデジタル技術を使って国民を監視するというディストピア的な話とは対照的に、この「デジタル民主主義」モデルでは、住民が問題に対する合意を最適な方法で見つけ出せるし、選挙で選ばれた議員をよりよく監視することもできる。
ただし、感染症対策における台湾の成功を他国が再現することは不可能に近いだろう。SARSの経験と教訓、その後に生まれ、制度化された能力はまねできない。
ここまで徹底した透明性や、政府当局によるデジタル監視を受け入れる風土も、やはり独特なものだ。
From thediplomat.com
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