最新記事

人種差別

日本や韓国はアジアじゃない? アジアの「異質さ」が差別との闘いを難しくしている

Just Who Is “Asian” ?

2021年4月15日(木)20時15分
エミリー・カウチ(ジャーナリスト)

210420P32_AJS_02.jpg

インド人とジャマイカ黒人を両親に持つハリス副大統領 KEVIN LAMARQUEーREUTERS


1900年に実施されたアメリカの国勢調査は、国民を白人、黒人、中国人、日本人、アメリカ先住民に分類していた。白人主導の政府は黒人を「色」で識別する一方、東アジア系の人を「国籍」でグループ分けしていた。

こうした違いは、今もアジアの定義をめぐる議論に影を落としている。最近、ツイッターに中国と朝鮮半島、そして日本の地図を載せ、「これはアジアじゃない」と書き込んだ人がいる。この人物はさらに西は中東までを含む地図を載せ、アジアは「これだ」と主張した。これには70万件近い「いいね」が付いた。

イギリスでは、アジア系といえばインド、パキスタン、バングラデシュ、そしてスリランカといった南アジア系の人を指すのが普通だ。かつての大英帝国の版図だし、第2次大戦後にはインドやパキスタンから多くの労働力を呼び込んでいるからだ。近年のイギリスでは南アジア系が人口の6.8%を占めるが、東アジア系は1%程度だ。

イギリスには南アジア系の政治家がたくさんいる(財務相のリシ・スナークや内相のプリティ・パテルなど)。またBBCのアジア向けラジオ局がカバーするのは、南アジアのニュースだけだ。

「オリエンタル」も不快な言葉

こんな文化環境で育った私は、自分自身をどう位置付けるか、今に至るまで確信を持てたことがない。見た目が私と似ている人たちを一括して呼ぶ表現として唯一、実際に聞いたことがあるのは「オリエンタル(東洋人)」のみ。これもまた不快な言葉だ。

アメリカの政治家やメディアはアトランタの銃撃事件を受けて、直ちに「アジア系コミュニティー」との連帯を表明した。新人議員として初めて議場の演壇に立った黒人牧師のラファエル・ワーノック上院議員は「アジア系コミュニティーに対する言語道断の暴力」と断じた。英ガーディアン紙には「アジア系コミュニティーは溺死するほど多くのつらさをのみ込んでいる」と題する寄稿が載った。ネットの情報サイトにもAAPI(アジア系アメリカ人と太平洋の島々の人)支援の記事が出た。

「コミュニティー」というのは尊厳と連帯の意味を含む力強い言葉だ。人はこの言葉で団結できる。理不尽な暴力に対抗するには、国籍や人種を超えたアジア系の「コミュニティー」という意識が必要なのは事実だろう。

しかし外部の人たちが軽々にこの言葉を使うのを何度も聞かされると、私は違和感を抱いてしまう。そんなコミュニティーの一員だとは、どうしても思えないからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中