【分析】若い支持者を失い、「コンデ」扱いされ、2市長選に大敗した韓国与党
若い世代は、文の掲げた公約が現政権下で実現できるとは思っていない(3月1日、ソウル) Pool via REUTERS
<2016年の総選挙から勝ち続けてきた文大統領の「共に民主党」が、首都ソウルと釜山の市長選で野党に敗北した。敗因は若い層の離反。20〜30代が与党を見限った、男女それぞれの理由とは>
韓国では2020年4月の総選挙に与党「共に民主党」が圧勝したことで、22年3月の大統領選でも与党勝利の道筋が見えたと思われていた。
共に民主党は2016年総選挙での予想外の勝利を皮切りに、17年の大統領選、18年の地方選、20年の総選挙と4連勝を記録。1987年の民主化以来、初の快挙を達成した。
成功の鍵は、40~50代前半の伝統的支持基盤に20~30代の若い有権者が加わったこと。これが、共に民主党と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の選挙戦勝利を決定付けた。2020年総選挙後の出口調査によると、20代の56.4%、30代の61.1%が共に民主党に投票した。
だが2020年の総選挙からほぼ1年後、韓国最大の都市で首都のソウルと第2の都市釜山の市長選で、共に民主党は最大野党「国民の力」に大敗した。第1の敗因は若い層の離反だ。
ソウルの出口調査によると、20代の男性有権者の実に72.5%が国民の力の呉世勲(オ・セフン)元市長に投票した。60代以上の女性に次ぐ高い支持率だ。20代女性は40代男性以外で唯一与党候補に多く投票したが、国民の力の候補との差は3.1ポイントの僅差だった。
若い層の中でも、20代男性は早い段階で文と与党を見限った。その多くは、「#MeToo(私も)運動」に端を発したジェンダーやフェミニズムに関する最近の議論を理由に挙げる。韓国の20代男性の間には、ジェンダー問題の議論は自分たちにとって不公平であり、上の世代が起こした問題で自分たちが罰せられているという不満がある。
一方、20~30代の女性は若い男性とは逆に、男女平等の実現を期待して文政権と与党を支持し続けた。彼女たちは共に民主党の中核的支持層と見なされていた。
だが2つの市長選の直前、この層も急速に離反した。ある世論調査によれば、20代女性の文の支持率は1週間前に比べて30ポイントも低下している。与党幹部が選挙戦の期間中、セクハラの告発を受けて自殺した朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長の業績を称賛したことが反発を買った可能性もある。
韓国の若い女性と男性を結び付けるものがあるとすれば、韓国語で言う「コンデ」に対する嫌悪感だろう。コンデとは、若い世代を見下す発言を繰り返す管理職の年配者を指す。保守派有利の政治状況下で奮闘するリベラル戦士、というイメージが売りものの共に民主党には予想外かもしれないが、多くの若い有権者は彼らを支配政党、または「コンデ」と考えている。