最新記事

米黒人史

【やさしい解説】米南部で「復活」した人種隔離政策「ジム・クロウ法」とは

2021年4月8日(木)13時10分
リベラルアーツガイド

2-2-3: 人種主義

社会進化論と同様にジムクロウ制度を稼働させた理由にあるのは、アメリカにおける人種主義の長い歴史です。

膨大な蓄積のある人種主義をここで解説することはできませんので、興味のある方は次の記事を参考に、アメリカの人種主義に関する理解を深めていってください。

【保存版】人種主義とは?その意味から具体例までわかりやすく解説

【人種とはなにか】分類の歴史・生物学の研究からその意味を解説

【ハオレとはだれか?】その意味から白人性までわかりやすく解説

【アファーマティブ・アクションとは】具体例から反対意見までわかりやすく解説

2-3: ジムクロウ法の廃止

さて、人種隔離の撤廃や1965年の投票権法の制定など、人種主義制度が改善をみせるのは1950年代から1960年代の公民権運動まで待たなければならなかったです。

周知のように、人種隔離を違憲とする1954年のブラウン対教育委員会裁判は、公民権運動を促進させたマイルストーン的な判決です。


メモ

ブラウン対教育委員会裁判は、教育を良き市民の土台であり州政府と地域のもっとも重要な機能であるした上で、教育における人種隔離を違憲としたものです。

ブラウン判決に至るまでの法廷闘争は中村(2005)の「教育と『人種』−再隔離とアファーマティブ・アクション−」を参照ください。


アメリカニズムと「人種」
created by Rinker
¥3,850
(2021/04/06 18:14:12時点 Amazon調べ-詳細)
Amazon


その他にも、1940年代には中国人排斥法の廃止、1967年に異人種間の結婚を禁止する法律の違憲を認めるなど、さまざまな人種主義的制度は時代とともに改善されていきました。

公民権運動の成果は、その後の有色人種の教育達成度の改善、彼らの経済的な成功、さらには有色人種の政治的指導者の出現に示されています。

しかし、公認の人種主義や合法の人種隔離制度が廃止されたことは、人種主義が社会に存在しないというわけでないという認識は大事です。ジムクロウ法をきっかけに、アメリカ社会に関する理解を深めていってください。

2章のまとめ

・ジムクロウと呼ばれる制度は「法律規制」と「社会的規範」から成り立った

・連邦政府はジムクロウという人種主義制度を公認し、黒人や有色人種を二級市民へとおとしめることを認めた

・公認の人種主義や合法の人種隔離制度が廃止されたことは、人種主義が社会に存在しないというわけでない

3章:ジムクロウを学べる本

ジムクロウについて理解を深めることができましたか?

ジムクロウはアメリカ黒人の歴史を語る上で欠かせないものです。ここで紹介する本を参考に、ジムクロウや黒人の歴史について理解を深めていってください。

おすすめ書籍

上杉忍『アメリカ黒人の歴史 - 奴隷貿易からオバマ大統領まで』(中公新書)

アメリカ黒人の歴史の概要を知りたいという方におすすめな本です。黒人の歴史が学術的に議論されているわけでないですが、全体像を把握したいという方はぴったりです。


アメリカ黒人の歴史 - 奴隷貿易からオバマ大統領まで (中公新書)
created by Rinker
¥902
(2021/04/06 18:14:13時点 Amazon調べ-詳細)
Amazon


ジェームス・バーダマン『アメリカ黒人の歴史』(NHK出版)

こちらもアメリカ黒人の歴史の概要をまとめた本です。アメリカが奴隷制を求めた社会的土壌からオバマ大統領まで議論されています。ジムクロウを含めて、学ぶことが多い本です。


アメリカ黒人の歴史 (NHKブックス)
created by Rinker
¥2,776
(2021/04/06 18:14:14時点 Amazon調べ-詳細)
Amazon


まとめ

この記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ


・「ジムクロウ」という言葉は、顔を黒塗りした白人俳優のトーマス・ライスが演じたキャラクターから生まれたもの

・ジムクロウと呼ばれる制度は「法律規制」と「社会的規範」から成り立った

・連邦政府はジムクロウという人種主義制度を公認し、黒人や有色人種を二級市民へとおとしめることを認めた

[執筆]飯島力(熊本大学人文社会科学研究部附属国際人文社会科学研究センター特任助教)

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの

ビジネス

クーグラー元FRB理事、辞任前に倫理規定に抵触する

ビジネス

米ヘッジファンド、7─9月期にマグニフィセント7へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中