最新記事

米中関係

台湾・尖閣・南シナ海「トラブルメーカー」中国の野望をどう止める

COUNTERING CHINA IN ASIA

2021年3月24日(水)07時20分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)
中国海軍

中国海軍のミサイル駆逐艦「太原」(2019年、中国海軍創設70周年を祝賀する観艦式で) Jason Lee-REUTERS

<日米「2+2」で日本が真っ先に触れたのは台湾問題。挑発行為を繰り返し、軍事大国化する中国への警戒感が高まっているが、その真の狙い何なのか。それに対する米軍の次の一手とは>

アジア太平洋地域を初の外遊先に選んだバイデン政権の閣僚は同盟国から、そして一部の米軍高官からも強く要請された。挑発行為を繰り返す地域のトラブルメーカー、中国を何とかしてくれ、と。

中国の威嚇的な行為は、軍事衝突を際どく回避しつつ、アメリカ主導の東アジアの地域秩序を自国主導につくり直す企ての一環だと、米国防総省の高官らはみている。

中国は地域における政治的せめぎ合いの場に激しい攻勢をかけている。東シナ海の尖閣諸島しかり、台湾しかり。中国空軍は日本と台湾のパイロットと航空機を消耗させようと、尖閣諸島や台湾の防空識別圏で危険な挑発飛行を繰り返している。

台湾の防空識別圏への中国軍機の侵入について、米国防総省の高官は匿名を条件にこう語る。「(NBAのスター選手を)7晩連続で試合に引きずり出すようなものだ。強い選手でも8日目にはヘロヘロになる」

そんなふうに台湾を追い込むのが中国の狙いだというのだ。

3月16日に東京で行われた日米防衛相会談で日本側が真っ先に触れたのは台湾問題だったと、会談に同席した別の国防総省高官は明かす。

日本の岸信夫防衛相、茂木敏充外相とロイド・オースティン米国防長官、アントニー・ブリンケン米国務長官が同日に行った日米外務・防衛閣僚協議、いわゆる「2プラス2」でも台湾が焦点の1つとなったことは会談後の共同声明からも分かる。

会談前の記者会見で岸は、インド太平洋地域の安全保障環境を「厳しさを増す」状況と評価していた。

バイデン政権はこの地域における安全保障体制の再構築を目指している。ブリンケンとジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は3月18日にアラスカ州で中国の外交トップと会談したが、その前にブリンケンとオースティンが日本と韓国を歴訪したのは中国との交渉に備えた足場固めのためだった。

バイデン政権は発足当初から台湾に関する懸念を中国に伝えてきたと、岸とオースティンの会談に同席した米高官は言う。尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲内であること(これも2プラス2で公式に確認された)も中国にはっきり伝えたという。

2プラス2で日本側はまた、中国が海上警備に当たる海警局に武器の使用を認める「海警法」を施行したことに深刻な懸念を表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中