台湾・尖閣・南シナ海「トラブルメーカー」中国の野望をどう止める
COUNTERING CHINA IN ASIA
中国海軍のミサイル駆逐艦「太原」(2019年、中国海軍創設70周年を祝賀する観艦式で) Jason Lee-REUTERS
<日米「2+2」で日本が真っ先に触れたのは台湾問題。挑発行為を繰り返し、軍事大国化する中国への警戒感が高まっているが、その真の狙い何なのか。それに対する米軍の次の一手とは>
アジア太平洋地域を初の外遊先に選んだバイデン政権の閣僚は同盟国から、そして一部の米軍高官からも強く要請された。挑発行為を繰り返す地域のトラブルメーカー、中国を何とかしてくれ、と。
中国の威嚇的な行為は、軍事衝突を際どく回避しつつ、アメリカ主導の東アジアの地域秩序を自国主導につくり直す企ての一環だと、米国防総省の高官らはみている。
中国は地域における政治的せめぎ合いの場に激しい攻勢をかけている。東シナ海の尖閣諸島しかり、台湾しかり。中国空軍は日本と台湾のパイロットと航空機を消耗させようと、尖閣諸島や台湾の防空識別圏で危険な挑発飛行を繰り返している。
台湾の防空識別圏への中国軍機の侵入について、米国防総省の高官は匿名を条件にこう語る。「(NBAのスター選手を)7晩連続で試合に引きずり出すようなものだ。強い選手でも8日目にはヘロヘロになる」
そんなふうに台湾を追い込むのが中国の狙いだというのだ。
3月16日に東京で行われた日米防衛相会談で日本側が真っ先に触れたのは台湾問題だったと、会談に同席した別の国防総省高官は明かす。
日本の岸信夫防衛相、茂木敏充外相とロイド・オースティン米国防長官、アントニー・ブリンケン米国務長官が同日に行った日米外務・防衛閣僚協議、いわゆる「2プラス2」でも台湾が焦点の1つとなったことは会談後の共同声明からも分かる。
会談前の記者会見で岸は、インド太平洋地域の安全保障環境を「厳しさを増す」状況と評価していた。
バイデン政権はこの地域における安全保障体制の再構築を目指している。ブリンケンとジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は3月18日にアラスカ州で中国の外交トップと会談したが、その前にブリンケンとオースティンが日本と韓国を歴訪したのは中国との交渉に備えた足場固めのためだった。
バイデン政権は発足当初から台湾に関する懸念を中国に伝えてきたと、岸とオースティンの会談に同席した米高官は言う。尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲内であること(これも2プラス2で公式に確認された)も中国にはっきり伝えたという。
2プラス2で日本側はまた、中国が海上警備に当たる海警局に武器の使用を認める「海警法」を施行したことに深刻な懸念を表明した。