最新記事
睡眠睡眠中に夢を見ている人とリアルタイムでコミュニケーションすることに成功した
映画「インセプション」のような、夢のハッキングはまだ遠いが...... K.Konkoly
<米ノースウェスタン大学などの研究チームは、明晰夢(夢であると自覚しながら見る夢)を見ている人とリアルタイムで双方向のコミュニケーションをする実験に成功した...... >
私たちは睡眠中、急速眼球運動を伴う「レム睡眠」の状態で、しばしば夢を見る。一度目が覚めてしまうと夢の記憶は曖昧で、しばらくすると忘れてしまうため、夢について解明されていないことは依然として多い。
米ノースウェスタン大学、仏ソルボンヌ大学、独オスナブリュック大学、蘭ラドバウド大学医療センターからなる国際研究チームは、明晰夢(夢であると自覚しながら見る夢)を見ている人とリアルタイムで双方向のコミュニケーションをする実験に成功した。
レム睡眠中に双方向コミュニケーションを試みた
2021年2月18日に学術雑誌「カレントバイオロジー」で発表された研究論文では「睡眠中に夢を見ている人は、質問を理解し、作業記憶(ワーキングメモリ)を用いて答えを導き出すことができる」ことも示されている。
被験者は、米国人22名、ドイツ人10名、フランス人1名、オランダ人3名の計36名で、過眠症の一種ナルコレプシーである1名を含め、明晰夢を頻繁に見る者が数名いた。被験者には、事前に、レム睡眠中のコミュニケーションとして、目を左右に動かす、顔の筋肉を収縮させるといった合図を覚えさせたうえで、頭部と目、あごに電極を装着して眠ってもらった。
研究チームは、被験者の脳波や眼球の動きをモニタリングし、被験者のレム睡眠中に双方向のコミュニケーションを試みる実験セッションを計57回行った。
研究チームが「あなたは今、夢の中にいますか」とたずねると、26%のセッションで、被験者が、事前に指示された合図のとおり、目を左右に動かすなどして、自分が明晰夢を見ていることを伝えた。「8から6を引くといくつですか」といった簡単な算数問題や「あなたはスペイン語を話せますか」などのイエス・ノー質問に正しく答えたり、閃光の数を正確に数えたりすることもできた。
研究チームがレム睡眠中の被験者に投げかけた計154回のタスクのうち、正しい反応がかえってきたのは18.4%で、17.7%は判別不能な反応、3.2%は誤った反応であった。また、60.8%は無反応だった。
問いかけが夢に重なるようにして聞こえた
レム睡眠中に反応した被験者の多くは、目が覚めたあとに「夢の中で研究チームからの問いかけを受け取った」と述べたが、その内容は誤っていたり、思い出せなかったりした。被験者の報告によると、研究チームからの問いかけが、ラジオのように、夢の外側から流れてきたり、夢に重なるようにして聞こえたそうだ。
たとえば、ある被験者は、夢の中でパーティをしているとき、「あなたはスペイン語が話せますか」という映画のナレーションのような声が聞こえたので、事前に指示されたとおり、顔の筋肉を収縮させて「いいえ」と答えたという。
一連の研究成果は、夢や記憶に関する今後の研究や、睡眠障害の治療などにも役立つのではないかと期待が寄せられている。