最新記事

海運

世界的なコンテナ不足が、世界の景気回復のブレーキに?

2021年2月12日(金)17時00分
冠ゆき

輸送費だけでない荷送人への負担

荷送人への負担は、コンテナ運賃の急上昇にとどまらない。フランスの荷主協会AUTFは、11月27日に発表したプレスリリースの中で、「価格の高騰とサービスの低下に加えて、海運業者は荷送人に多くの追加料金を課している」と非難している(ストラテジー・ロジスティック誌, 11/30)。

以前は10日前で済んだ予約も、現在は平均50日も前にする必要がある、という。それにもかかわらず、オーバーブッキングが多いため、キャンセルされることも少なくない。

無事に港まで届いた後も、荷送人の受難は終わらない。作業員が不足していることや、感染予防のための手続きが煩雑であることが理由で、コンテナが港に長く滞留され、時間も費用も余分に掛かるのだ。

このコンテナ運賃の価格高騰が各国の輸出増加を阻害し、世界の景気回復のブレーキとなりかねないと危惧されている。

海運業者のひとり勝ち?

11月27日のプレスリリースの中で、フランスの荷主協会AUTFは、海運業者は、新型コロナウイルスを要因とする一連の状況を「故意に長引かせ、経済的な利益を得ている」と批判している。

確かに、世界的にパンデミックを理由とする制限策で、経済的被害を受ける業界が多い中、海運業者は逆に恩恵を受けたかに見える。実際、Investing.com(1/19)によれば、業界最大手のA.P.モラー・マースクの株式は、「11月半ばから(中略)34%上昇した」し、ドイツ大手海運業者ハパックロイドに至っては「同期間中に86%の上昇」、「10月と比べると倍増」という高値に達した。いずれも、1月20日前後をピークとし、その後わずかに下がりはしたが、2月9日現在いまだ1月上旬に匹敵する高値を保っている。

フランスEDHEC経営大学院のフィリパール教授は、海上輸送費は春節休暇明けに下がるであろうと予測している。そのほかも、パンデミックが収束に向かえば、自然と消費傾向も元に戻り問題は解決するというのが大方の見方だ。

ただし、元通りになるには、荷送人をはじめ影響を受けるサプライチェーンの体力がそこまでもつ必要があるだろう。上述のテキスタイル業者の場合、20フィートコンテナの輸送費が2000USドルを超えるとすでに収益は見込めないという(ストラテジー・ロジスティック誌, 2/4)。すでに4400USドまで値上がりしている現在、どちらを向いても厳しい状況であることは明白だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中