最新記事

日本企業

東京五輪、沈黙するスポンサー企業 中止観測広がり苦しい立場に

2021年1月29日(金)17時43分

協賛したスポンサー企業は本来、大会のロゴやキャラクターなどを使って広告・宣伝活動を大々的に展開することができる。複数の関係者によると、昨年末の時点まで、スポンサー企業はいったん延期になった開催機運を盛り上げようと宣伝活動の再開を検討していたという。

だが、年明けに2回目の緊急事態宣言が出た後は「トーンダウンした」と、関係者の1人は話す。ロイターが取材したスポンサー企業のうち、6社は五輪を活用した宣伝活動を自粛あるいは延期していると答えた。コロナ禍で開催に慎重な世論が広がる中で、開催をイメージした前向きなテレビCMを流せば、消費者から「不謹慎」と指摘されかねないためだ。

アサヒグループホールディングスの関係者によると、同社は昨夏の大会延期後、開催に向けた詳細が明確になるのを待つため、予定していた広告・宣伝の一部計画を先延ばしした。ゴールドパートナ―であることを伝える映像は、今もテレビCMで使っている。同社広報はロイターに対し、大会の先延ばしが決まって以降、一部広告を延期したことを認めた。

競技のチケットを確保し、顧客を招待・接待できることもスポンサー企業になる利点だが、中止あるいは無観客開催になればそのメリットも失われる。「観客を入れるのか入れないのかなど、全然決まっていない。それが決まらないとチケットの販売、スポンサーに対する割り当てについても決まらないから、企業側は怒ってると思う」と、大会関係者の1人は言う。

聖火リレー、淡々と準備

企業は3月25日に始まる聖火リレーの行方にも気をもんでいる。10年前に発生した東日本大震災からの「復興」を世界にアピールする東京五輪の聖火リレーは、福島県を出発し、121日間かけて全国を回る。聖火リレーの協賛企業は大会そのもののスポンサーとは別で、沿道で自社のサンプル品を配布したり、運営に必要な機材を提供したりするなど運営に協力する。

しかし、コロナの拡大に歯止めがかからない中で、感染対策は必須。当初計画通りのコースを走るのか、沿道の観衆はどうするのか、新たな実施形態について、まだ詳細を聞かされていないという。「昨年開催するはずだった計画を前提にして淡々と準備を進めている」と、協賛企業の関係者は言う。

閑散とした沿道をランナーが1人で走る可能性もあることから、その映像をそのまま流しても「絵にならない」と懸念する関係者もいる。「どういう形で聖火リレーを報道してもらうか考えなくては、という話が出ている」と、同関係者は話す。

準備を進める組織委はロイターの問い合わせに対し、「聖火リレーの感染対策は検討中」と回答。予定通り3月25日に実施するとした。

2020年の夏季大会が東京に決まってから8年。長野県で開いた冬季大会以来となる日本での五輪開催に向け、スポンサー企業も国が威信をかけたプロジェクトの準備を支えてきた。コロナの感染拡大で1年延期が決まった後も、異動せずに五輪担当を続けている社員は多い。

「まさかもう1年いるとは思わなかった」と話す関係者の1人は、自らをベトナム戦争を戦った米兵に例える。「日本のためだと思って一生懸命毎日仕事をしているが、国民からは、お前ら間違っていると言われているように感じる」

*12段落目のアサヒグループホールディングスに関する記述を訂正します。同社が、東京五輪のゴールドパートナ―であることを伝える映像をCMから外しているとの記述は誤りでした。同社の広報コメントを追加しました。

(白木真紀、山光瑛美 Ju-min Park、斎藤真理 取材協力:Sam Nussey、山崎牧子、金昌蘭、安藤律子、清水律子、新田裕貴、梅川崇、竹本能文、平田紀之 編集:久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】


ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英大企業の景況感、コロナ禍以来の低水準 イラン情勢

ワールド

米豪、重要鉱物に35億ドル超投資へ 昨年の協力協定

ビジネス

ポルシェ、1─3月期販売は15%減 米中の需要低迷

ビジネス

米ロッキード、パトリオット生産加速継続へ47億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 2
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中