繰り返される衰退論、「アメリカの世紀」はこれからも続くのか
「アメリカ・ファースト」とは何だったのか?
■待鳥: これまで議論しましたようにアメリカが中から大きく揺らいでいる一方で、「アメリカ・ファースト」など国民意識の高まりなど、むしろ強いアメリカを外には見せる動きもありました。これは、やはりあえて「アメリカ・ファースト」と言わないと「多のなかの一」(註:アメリカの国章に刻まれた標語で「多様性のなかの統一」と訳されることもある)が成り立たなくなってしまう、つまり自分たちの物語が完全に壊れてしまう警戒感が、特に保守側にはあったのではないかと。
■小濵: アイデンティティを外に向かって声高に主張し始めるときは、そうしないと自らのアイデンティティが危ぶまれる状況ではないかと思います。例えば、私は奈良県出身でふだんは「関西人」くらいに思っていますが、奈良県の悪口を言われるとムキになって奈良県がどれほど素晴らしいかという反論をしてしまうというのも自分のアイデンティティが危機に瀕するからです(笑)。
一部の保守派の人たちにとってみれば「これがアメリカだ」と思っていたものが他のアメリカ人から「それは違う」と言われ、国内だけでなく世界でも批判され始めてしまった。そこで、自分たちのアイデンティティを再認識したいという動きが現れているのが現在のアメリカではないでしょうか。その抵抗感や恐怖感にトランプ氏が、ある意味では非常にうまく火をつけてきたのだと思います。
■田所: 「アメリカ・ファースト」に関して言うと、小濵先生のご指摘されるような国内のゆらぎに対するリアクションだという見方と同時に、対外的な危機でもよく起こりますよね。アメリカが非常にまとまった例としては真珠湾攻撃、そして直近では9・11です。対外的脅威があるから団結しないといけない。団結して我々が守るべきものは何かということを再確認せざるを得なくなる、と。
アメリカにとってそれが今は米中対立になりますが、実際にそれがアメリカ人にとって自らのアイデンティティが危機に瀕するほどのものなのか、それともやはり今まで議論してきたような国内的な事情が圧倒的な要因で、国内における社会の分断が引き起こしてる現象と解釈したほうがいいのか。小濵先生のご意見をうかがいたいのですが、どうでしょうか。
■小濵: まず、対外的な関係を考えるうえで構造的に大きいのは、アメリカの力が相対的に低下しているという認識が国内で広がっている点です。イラク戦争以降の傾向ですが、オバマ外交とトランプ外交の共通点は、アメリカが衰退しつつあるという前提の元に外交政策を立案したことだという指摘もあります。
アメリカが圧倒的に強くて豊かであれば、自国を誇りに思えた部分は多分にあったはずです。そうしたアメリカに対する誇りや社会の絆が弱っている現状で、中国との違いを強調していくことによってアメリカらしさを再定義していくというのは政治家にとっては今後、非常に誘惑されるオプションだと思います。
しかし、冷戦期と異なるのは現在のアメリカ経済は大いに中国に依存しており、中国と協調できるかもしれないという希望も捨てきれないことです。そんな中で中国を敵として自分たちのアイデンティティを再定義していくことに多くの政治家が二の足を踏んでいる状況が、近年の中国をめぐる議論からは読み取れます。
※後編:「アメリカを統合する大前提が『今回壊れた』可能性は何パーセントか」に続く。
『アステイオン93』
特集「新しい『アメリカの世紀』?」
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アステイオン編集委員会 編
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