ブレグジットで高まる「統一アイルランド」への期待
Time for a United Ireland
また、統一アイルランドの憲法や政治構造はどのようなものになるべきなのか。派閥抗争にどう対処し、合意と平等と敬意と多様性を尊重する統一国家をつくるには、どうすればいいのか。
北アイルランド包括和平合意は、北アイルランドが将来、「イギリスとの統一または連合」について住民投票を行うことができると定めている。このためブレグジットを機に、この条項に基づきイギリスとの関係を見直すべきではないかという議論が、にわかに盛り上がっている。
統一はEU復帰への道
EU首脳が2017年、北アイルランドが(EU加盟国である)アイルランドと統一した場合、自動的にEUに復帰することができるとの見解を示したことも、この議論に拍車を掛けた(これに対し、やはりイギリスからの分離とEU加盟を希望するスコットランドの場合、一から加盟手続きを踏まなければならない)。
北アイルランドの人々にとって、アイルランド統一はEU復帰の道でもあるのだ。
最近、影響力のある研究機関が統一の是非を問う国民投票等に関する重要な論文を相次いで出した。その全てが国民投票と統一に向けた計画の必要性を指摘している。
北アイルランドのアルスター大学チームが発表した論文「憲法上の将来を熟考する」は統一をめぐる住民投票を含め憲法改正に関する議論を検証した。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)憲法ユニットの中間報告も、「住民投票のプロセスや統一アイルランドの国の形について、あるいは連合の継続(北アイルランドがイギリスに帰属し続けること)を選択する場合でも、いずれも事前に検討し計画すること」が重要だと指摘している。
アイルランド民族主義の有力な市民団体「アイルランドの未来」も提言書をまとめ、事前の計画と十分な情報の共有、データに基づく議論の重要性を訴えている。これらの調査報告を受け、私たちは市民が中心となって変革の土台を築くため全島規模の市民議会の開催を呼び掛けている。
残念ながら、アイルランド政府は今のところ統一の是非を問う国民投票の実施に難色を示している。政府のこうした姿勢は今に始まったものではない。統一を掲げるシン・フェインが前回の総選挙で大躍進を遂げ、第2党になった事実が物語るように、世論は建設的な変革を求めているが、歴代の政権はかたくなに民意に背を向けてきた。