最新記事

アイルランド

ブレグジットで高まる「統一アイルランド」への期待

Time for a United Ireland

2021年1月6日(水)18時15分
ジェリー・アダムズ(前シン・フェイン党党首)

magw210106_Ireland2.jpg

交渉に手こずるジョンソン英首相 TOBY MELVILLE-REUTERS

また、統一アイルランドの憲法や政治構造はどのようなものになるべきなのか。派閥抗争にどう対処し、合意と平等と敬意と多様性を尊重する統一国家をつくるには、どうすればいいのか。

北アイルランド包括和平合意は、北アイルランドが将来、「イギリスとの統一または連合」について住民投票を行うことができると定めている。このためブレグジットを機に、この条項に基づきイギリスとの関係を見直すべきではないかという議論が、にわかに盛り上がっている。

統一はEU復帰への道

EU首脳が2017年、北アイルランドが(EU加盟国である)アイルランドと統一した場合、自動的にEUに復帰することができるとの見解を示したことも、この議論に拍車を掛けた(これに対し、やはりイギリスからの分離とEU加盟を希望するスコットランドの場合、一から加盟手続きを踏まなければならない)。

北アイルランドの人々にとって、アイルランド統一はEU復帰の道でもあるのだ。

最近、影響力のある研究機関が統一の是非を問う国民投票等に関する重要な論文を相次いで出した。その全てが国民投票と統一に向けた計画の必要性を指摘している。

北アイルランドのアルスター大学チームが発表した論文「憲法上の将来を熟考する」は統一をめぐる住民投票を含め憲法改正に関する議論を検証した。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)憲法ユニットの中間報告も、「住民投票のプロセスや統一アイルランドの国の形について、あるいは連合の継続(北アイルランドがイギリスに帰属し続けること)を選択する場合でも、いずれも事前に検討し計画すること」が重要だと指摘している。

アイルランド民族主義の有力な市民団体「アイルランドの未来」も提言書をまとめ、事前の計画と十分な情報の共有、データに基づく議論の重要性を訴えている。これらの調査報告を受け、私たちは市民が中心となって変革の土台を築くため全島規模の市民議会の開催を呼び掛けている。

残念ながら、アイルランド政府は今のところ統一の是非を問う国民投票の実施に難色を示している。政府のこうした姿勢は今に始まったものではない。統一を掲げるシン・フェインが前回の総選挙で大躍進を遂げ、第2党になった事実が物語るように、世論は建設的な変革を求めているが、歴代の政権はかたくなに民意に背を向けてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中