最新記事

アイルランド

ブレグジットで高まる「統一アイルランド」への期待

Time for a United Ireland

2021年1月6日(水)18時15分
ジェリー・アダムズ(前シン・フェイン党党首)

magw210106_Ireland3.jpg

筆者アダムズは統一を目指す CLODAGH KILCOYNE-REUTERS

ブレグジットの移行期間は31日をもって終了するが、その1週間ほど前の23日は南北の分割統治を定めた「アイルランド統治法」の成立から100年に当たる日だった。この取り決めが失敗だったことは自明の理である。北アイルランド経済の脆弱性はその証左の1つ。そして長年続いた紛争がそこに加わる。

ブレグジットとコロナ禍で、分割のデメリットと統一のメリットが一層明らかになった。今や全島規模で、ますます多くの人が統一を訴える主張に共感を寄せている。

バイデンの姿勢に期待

国外に離散したアイルランド人、とりわけアイルランド系アメリカ人は統一の是非を問う国民投票の実施と統一そのものをめぐる議論を広げる上で重要な役割を果たすだろう。これまでも彼らの声を受けて、歴代の米政権がアイルランドの和平プロセスの進展と成功に大きく貢献してきた。ブレグジットとアイルランド統一についても、アイルランド系アメリカ人の要望を受けてジョー・バイデンとカマラ・ハリス率いる次期米政権が多大な貢献を成すだろう。

バイデンは11月の米大統領選後、ハードボーダーの復活に反対する考えをはっきりと表明した。ジョンソン、アイルランドのミホル・マーティン首相、エマニュエル・マクロン仏大統領との話し合いでも、バイデンはその点を強調した。「北と南の国境を再び閉鎖するという考えは端的に言って正しくない。国境は開かれたままにすべきだ」

バイデンはさらに「北アイルランドに平和をもたらした(1998年の)合意をブレグジットの犠牲にすることは断じて許さない」とも明言した。

離脱交渉の結果がどうなるにせよ、北アイルランドでブレグジットを支持した民主統一党への批判が広がるなど、アイルランド島全域でEU残留を望む声が高まっている。その結果、アイルランドの将来をめぐる議論に関心を持つ市民もかつてなく増えている。

私たちの世代でアイルランドを統一できると私は確信している。私たちの世代のアイルランド系アメリカ人は、彼らがその樹立を支援し統一された新生アイルランドに真っ先に帰還するだろう。

<本誌2021年1月12日号掲載>

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:「ドルサイクル」転換の年に、トランプ氏復帰で

ビジネス

アングル:中国の小規模銀行再編、健全化の道遠く 統

ビジネス

日本生命、医療データ分析のMDVにTOB 1株16

ビジネス

焦点:問われるFRBの独立性、理事解任訴訟 最高裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中