子育て年齢の上昇で日本社会の何が変わる?
この30年で既婚女性の子育て期の年齢は4年ほど上昇した Yagi-Studio/iStock.
<家族の介護を担う子ども「ヤングケアラー」の支援が差し迫った課題となっている>
晩婚化・晩産化が進んでいる。40歳を過ぎてからの出産となれば、子育ては60代まで続く。子どもが大学院への進学を希望したら、定年後もかなりの費用負担が必要になることが考えられる。
こうしたケースがどのくらいあるかというと、2019年に生まれた子どもは86万5239人だが、このうちの5万840人(5.9%)は母親が40歳以上だった(厚労省『人口動態統計』)。これはまだ少数派だが、母親が35歳以上の新生児は29.1%にもなる。1976年生まれの筆者が生まれたとき母親は36歳だったが、当時では晩産の部類でも、今では珍しくも何ともない。
時代と共に、子育て期は後ろへとずれ込んでいる。最近では、50代でも小・中学生の子育て中という人は少なくないはずだ。各年齢の既婚女性の何%が子育て中なのか。<図1>は、同居している未成年の子がいると答えた人の割合のグラフだ。各年齢の数値をつないだカーブを、1985年と2015年で比べている。基幹統計の『国勢調査』から作成した。
ピークを見ると、1985年では35歳だったが、2015年では39歳となっている。この30年間で、子育て中の女性の率のカーブが右にシフトしており、子育て期が中高年期までずれ込んでいることが分かる。
50歳の時点に注目すると、未成年の子と同居している人の率(子育て中率)は、1985年ではわずか7.6%だったが、2015年では52.0%と半数を超えている。一昔前は、50代にもなれば子は独立して親は一息つけていたが、現在はそうではない。50代も立派な子育て期だ。これがどういうインパクトを持つかは、3つの側面に分けられる。
ダブルケア(育児+介護)の負担
まずは親の負担に関わることだ。50代と言えば、親の介護ものしかかってくる。自身の体力も衰えてくる時期に、「育児+介護」のダブルケアを課される人(とくに女性)が増えることになる。両親を郷里において都会に出てきている人も多いので、遠隔介護は増えてくるだろう。子どもが独立した後なら定期的に介護帰省もしやすいだろうが、子育て中となるとそうはいかない。地方においては、老親の見守りサービスへの需要が増すことが考えられる。
2つ目は教育費だ。大学進学該当年齢の子の親はおおむね45~54歳だったが、これが一段ズレて50代後半、場合によっては60歳を超えてしまうことになる。今は、子どもの大学進学期が親の年収ピークとうまく重なっているが、今後はそうではない。これを機に、大学の学費を家計に依存する日本の現状を見直すべきだ。