最新記事

中国貿易

アメリカを抜いてEUの最大貿易相手国にのし上がった中国の戦略的勝利

China Celebrates Surpassing US in Trade with EU for the First Time

2020年12月7日(月)15時53分
トム・オコーナー

中国との協力のこのモデルは、ヨーロッパだけでなく、世界全体に適用される、と華は言う。

「今後、新たな開発パラダイムを発展させる一方で、中国はさらに経済を開放し、EUはじめ他の国々により多くの機会を提供するだろう」と、華は付け加えた。「われわれは、EUが貿易・投資市場の開放を続け、中国と協力して経済のグローバリゼーションと貿易と投資のための開かれた自由な環境を支えることを望む」。

19世紀に世界最大の経済大国といわれた中国は往年の地位を取り戻そうとしており、その勢いに、西側諸国では多くの人が驚き、狼狽している。

中国は現在、経済では世界第2位だが、第二次世界大戦後に中国共産党が政権を奪った時点では5位だった。中国は今後10年ほどで世界最大の経済大国になると予測されている。

バイデン政権で欧米が統一歩調?

ヨーロッパではフランスやドイツ、イギリスといった国々が、中国の経済や人権の分野での強引な行動やアジアにおける地政学的紛争について非難の声を上げた。

だが一方で、フランス・ドイツとアメリカとの関係も良好とは言えなかった。ドナルド・トランプ米大統領は中国政府に対して好戦的な態度を取る一方で、ヨーロッパの同盟諸国との関係の見直しも望んでいた。アメリカの政権交代を来月に控え、EUはすでにジョー・バイデン次期米大統領との連携を目指す新たな戦略の立案を始めている。

EUの欧州委員会は2日、「グローバルな変化に向けたEUとアメリカの新たなアジェンダ」と題する11ページの文書を発表。「意見の近いパートナーとの新しいグローバルな同盟関係のかなめ」となる枠組みを提案した。

この新たな戦略において中国は「協力に向けた交渉相手であり、経済的な競争相手であり、制度的ライバル」であると位置づけられている。

また、EUはさらに強力になりつつある中国への対応が必要だとする一方で、貿易戦争を始めて国際市場を揺るがしたトランプ政権の対中政策を非難している。

「国際社会において中国が強引さを増していることによる戦略的課題に関し、開かれた民主社会であり市場経済であるEUとアメリカの意見は一致している。たとえ最良の対応についての意見が常に一致するとは限らないにしても」とこの文書には書かれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中