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50代男性の体罰の許容率が他の年代より高い理由

2020年12月11日(金)14時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

今年4月の児童虐待防止法改正で保護者の体罰も禁じられた takasuu/iStock.

<子どもの頃に体罰を受けた人は、それを愛情表現と歪んで認知し、自分の子どもにも体罰をしてしまうことがある>

2012年末に大阪の高校で教師から体罰を受けていた生徒が自殺する事件が起きて以来、学校現場での体罰が社会問題化している。昔なら不問に付されていた行為も懲戒処分の対象となり、最近では警察沙汰になる頻度も増している。

学校は、治外法権が認められる「聖域」ではなくなりつつある。学校の外で子どもを叩いたら即110番だが、こうした一般社会のルールが容赦なく適用されるようになっている。小・中学校でも条件付きでスマホの持ち込みが認められるようになったが、証拠の動画を撮り、生徒自らが通報するようになるかもしれない。

意識の上では、体罰に対する日本人の目線は厳しい。2017〜20年に実施された『第7回・世界価値観調査』では、子どもを叩くことへの許容度を10段階で尋ねているが、日本人の回答平均値は1.30となっている。9割近くが最低の「1」を選んでいる。

データが分かる48カ国の許容度平均を高い順に並べると、<表1>のようになる。

data201211-chart01.png

子どもを叩くことへの意識だが、国によってかなり違っている。最高の6.01から最低の1.22までの開きがある。

左上の上位を見ると、発展途上国が多くなっている。体罰意識は、おおよそ経済発展のレベルと相関しているようにも見える。日本は下から2番目で、意識の上ではかなり啓発されているようだ。しかしこれはあくまで口先の意識表明で、実際の行動がどうかは分からない。子どもの体罰被害率といった指標では、順位がガラリと変わる可能性もある。

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