「模範的な優等生国家」は幻想、ドイツで格差が拡大したのはなぜか
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2005年以降のドイツ経済の回復と失業率の改善はハーツ4のおかげだとされるが、ブターベッゲによれば、その恩恵は国内の平等を犠牲にして得られたものだ。
ハーツ4は、企業が人件費を圧縮して輸出を拡大できるように、幅広い低賃金業種を生み出したのであり、「社会的市場経済」の社会的な部分を縮小し、格差を広げ、ドイツ経済をアメリカ化した。
ハーツ4は社会保障を縮小することにより、求職者に低賃金と劣悪な労働条件を受け入れることを余儀なくさせた。それは長期的な失業者に多大なプレッシャーを与えただけでなく、実質的な所得減を(特に低所得世帯に)もたらした。
その意味で、この改革はドイツ社会に階級を生み出す役割を果たした。
ドイツの産業は人件費を減らして競争力を高めることができたが、国内には地位が不安定で不当に安い賃金に甘んじなければならない労働者層が生まれた。その結果、ドイツは経済的な格差と社会的な格差によって分断されるようになったと、ブターベッゲは結論付ける。
故に『引き裂かれた共和国』というわけだ。ブターベッゲによれば、ドイツはもはや冷戦時代のように、イデオロギーによって東西に分断されてはいないかもしれないが、格差によって引き裂かれつつある。
格差の問題は、ダニエル・ゴファルトの著書『中間層の終焉』の大きなテーマでもある。だが題名が示すように、本書が主眼を置くのはドイツの「サクセスストーリー」の骨格だった中間層の崩壊だ。
ジャーナリストのゴファルトに言わせると、戦後初期のドイツの階層構造はタマネギ形、すなわち所得分布の上下両端が細く、分厚い中間部に大部分の世帯が位置していた。問題はタマネギが洋ナシに変化したこと。今では最上部が細く、底辺部が膨らんだ形になっている。
ゴファルトが描き出すのは、もはやおなじみの物語だ。
利己的なエリート層のせいで、中間層は恵まれなくなる一方。企業経営幹部の収入は30年前の10倍に上るが、年収中央値に変化はほぼ見られない。以前なら、平均的世帯は1人分の稼ぎで豊かな生活ができたのに、主要都市では今や、共稼ぎでなければ2寝室のアパートメントにも手が届かない。
原因は何か。ゴファルトによれば、人口統計とデジタル化が2つの主な要因だ。加えて、誤った政策が悪影響に拍車を掛けているという。