SDGs優等生の不都合な真実 「豊かな国が高い持続可能性を維持している」という嘘
SDGS NOT REALLY SUSTAINABLE
極端な例ばかりを挙げているのではない。英リーズ大学の科学者が発表したデータによると、SDGインデックスの上位の国々は資源消費量や温暖化ガスの排出量だけでなく、土地利用や窒素などの化学物質の環境への排出量といった点でも、人口比で各国に許容される範囲を大幅に超過している。
全ての国がSDGインデックス上位国のレベルで消費し、環境汚染を続けていくとすれば、地球の生態系は間違いなく、物理的に破壊されてしまう。
つまりSDGインデックスは、エコロジーの観点から見ればつじつまが合わない。それは事実と異なる錯覚を引き起こし、豊かな国は高いレベルの持続可能性を維持しているという間違った印象を与える。
どうしてそうなるのだろうか。SDGインデックスは国連の定めた17の「持続可能な開発目標」によって作られており、それぞれの目標には多くのターゲットが含まれている。点数の算出に当たっては最初にターゲットごとにデータを集めて達成度を評価し、それらの平均を求めて目標ごとの点数を出す(ただし国によっては必要なデータがそろわない場合もある)。そして、目標ごとの点数の平均値が国の点数となる。このプロセスは合理的に見えるが、実はそこに分析上の重大な問題が潜んでいる。
まずは評価項目の比重の問題だ。どの目標も3つの観点から評価されるが、観点ごとに評価項目の数が異なる。具体的にはエコロジカルな負荷(森林破壊や生物多様性の喪失など)、社会的な開発度(教育の充実や飢餓の解消など)、そしてインフラの開発度(交通機関や送電網の整備など)という3つの観点があり、ほとんどの目標はこの3つの組み合わせで評価される。だが現実には、必ずと言っていいほど開発関連の評価項目数がエコロジカルな負荷の評価項目数を上回っている。
例えば目標11(住み続けられるまちづくりを)には4つの評価項目があるが、3つは開発関連で、生態系への影響に関する項目は1つだけだ。つまり開発関連で高い評価を得れば、生態系への負荷が大きくても(つまり持続可能性が低くても)結果として点数は高くなる。
しかも17ある目標のうち、生態系の持続可能性を主眼とするものは4つ(目標12〜15)だけで、あとの13目標は開発に重点を置いている。つまりここでも、たとえ持続可能性の点数が低くても開発関連で点数を稼げば総合点は上がる。だから生態系への負荷という点では劣等生のスウェーデンやドイツ、フィンランドのような国が、SDGインデックスでは上位に来てしまう。